コラム

2020.08.31

シティプロモーションとは?「地方創生SDGs」と「自治体の成功事例」を解説


地方創生や地域活性化を目指して世界の都市で進められているシティプロモーション。近年は特にSDGs(持続可能な開発目標)に関わる取り組みとしても関心が高く、人口減少に直面する先進諸国で広く普及しています。もちろん少子高齢化の進む日本も例外ではなく、全国各地で多くの自治体が本腰を入れてシティプロモーションに取り組み始めています。

高い注目を集めるシティプロモーションですが、実際にはどのような意味を持ち、具体的にはどのような活動が行われているのでしょうか。そこで今回は、シティプロモーションの意味と目的、そして世界中で行われているシティプロモーションの先進事例について詳しく解説します。

この記事を読めば、シティプロモーションの重要性と効果を正しく理解できます。

シティプロモーションとは

「シティプロモーション」とは、地方自治体によって行われる、地域のイメージを向上させるために行われる活動の総称です。「シティプロモーション」という言葉は一般にはあまり認知されていないかもしれませんが、例えば自治体の「ゆるキャラ」などもこの取り組みの一つと捉えることができ、意外にも身近な存在だと言えます。

まずは、シティプロモーションの意味とその目的を確認しておきましょう。

シティプロモーションの意味

「シティプロモーション」とは、地方自治体による「地域活性化のためのすべての活動」を意味します。具体的には、地方自治体による「広報活動」あるいは「営業活動」と言えばイメージしやすいのではないでしょうか。

日本では少子高齢化が叫ばれて久しく、多くの自治体で人口の減少が続いています。人口減少は自治体の経済力低下につながり、それが原因となってさらに多くの人が都市部へと流出していく悪循環が生まれています。これを食い止めるための取り組みとして始められたのが「シティプロモーション」です。

シティプロモーションの目的

シティプロモーションの目的は「自治体を維持していくこと」です。そして、これを達成するための具体的な目標になるのは、大きく以下の3つが挙げられます。

  • 地域ブランディングを通して地域のイメージを向上させる

    移住者や定住者の数を増やす

    地域への人の往来を増やす

シティプロモーションのゴールは、これらを実践することで地域の経済力を向上させ、「魅力ある地域として人々に選ばれる街」を目指すことです。

シティプロモーションの全国の事例

上記のような目的のもと、実際にどんな取り組みが進められているのでしょうか。ここでは、先ほど挙げた3つの目的別に、全国のシティプロモーションの先進事例をご紹介します。

地域ブランディングの先進事例

地域ブランディングは、地域の名産品や地域独自のサービスを、その地域のイメージと結び付けてブランド化する取り組みです。最近は大都市にアンテナショップを構える自治体も増えているほか、ふるさと納税も普及し、全国の消費者が地方の商品を目にする機会も増えています。地域ブランディングによって地域の名前が広く全国に認知されれば、地元事業者の売上も伸び、地域経済の活性化につながります。

地域ブランディングの代表例としては、「くまモン」のようなご当地のゆるキャラを使った取り組みや、「今治タオル」のような地域の名産品の展開などが有名です。「市町村」や「県」単位での取り組みが一般的で、先進的な取り組みとしては、兵庫、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛の7県の広域連携による「瀬戸内ブランド」の取り組みが挙げられます。この事例では、エリア特有の産品や地域資源を活用した体験サービスなどを「瀬戸内ブランド」として登録し、瀬戸内の文化を体現するブランドの確立を目指しています。これは事業会社と金融機関、そして行政が連携した官民共同の取り組みです。

瀬戸内ブランドの登録の他に、瀬戸内の魅力を発信するための独自メディアの運営なども行っており、瀬戸内地域に住むライターやカメラマンが取材して作成した記事が掲載されています。

移住・定住促進に向けたシティプロモーション

先に述べたように、シティプロモーションの様々な取り組みは、自治体の経済基盤を維持することを究極的な目標としています。その点から考えれば、移住者を呼び込み定住者を増やす取り組みは、自治体の税収を確保するための最も堅実な方法だと言えるでしょう。

移住促進のための空き家改修費の補助や起業支援、あるいは子育て支援などの取り組みは、全国で広く行われていますが、実際に人口が増加している自治体の例として、福井県の鯖江市が挙げられます。

鯖江市は眼鏡枠の国内製造の96%を担う眼鏡産業の一大拠点で、近年は「めがねのまちさばえ」の知名度向上を図ることで産業の活性化を進め、雇用の創出や移住者の呼び込みに成功しています。さらに、鯖江市では地元出身者の多くが高校卒業後に県外に流出してしまうことを踏まえ、市民協働推進プロジェクト「鯖江市役所JK課」が発足。女子高校生の発想を活用したアプリやスイーツの開発を行ったことにより、参加した女子高校生の多くが卒業後にも地域に残り、まちづくりの分野で活躍するという成果が挙がっています。

来訪者を増やすためのシティプロモーション

地域への来訪者を増やすことも、地域経済の活性化に大きく貢献します。来訪者というと観光客をイメージするかもしれませんが、地域に訪れるのは観光客ばかりではありません。

例えば、国際会議や展示会のようなビジネスイベントを開催すれば、観光客だけでなくビジネス関連の来訪者を増やすことができるでしょう。こうしたビジネスイベントのことを総称して「MICE」と呼んでいます。

  • Meeting(企業などの会議)
  • Incentive Travel(企業などが実施する報奨旅行や研修旅行)
  • Convention(国際機関・団体・学会などが行う国際会議)
  • Exhibition/Event(展示会・見本市などのイベント)

最もよく知られた例としては、兵庫県神戸市が挙げられます。神戸市は、1981年のポートアイランド完成以降、日本を代表するコンベンション都市として大きな成功を収め、2015年にグローバルMICE都市に指定されました。2016年にG7神戸保健大臣会合、2019年には参加者5,000人を超える国際技師装具協会世界大会、国際リハビリテーション医学会の大型国際会議の誘致成功など、数々の実績を挙げ、その経済波及効果は920億円に及びます。

【関連記事】MICE施設 | 神戸MICEの中核を担う「神戸コンベンションセンター」

私たちJCSは、2010年より、これら国際会議の舞台となる神戸コンベンションセンターの指定管理者として、都市戦略の推進に貢献しています。

SDGs推進を通したシティプロモーション

近年、世界的な注目を集めているのが、持続可能(サステナビリティ)な開発目標(SDGs)の推進を通したシティプロモーションです。持続可能なまちづくりを進めることで地域の魅力を高め、訪問者や定住者を増やすための取り組みが、世界中で始まっています。

SDGsの推進と地方創生

日本政府が公表している「SDGsアクションプラン2020」では、3つの柱の一つとして「SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境に優しい魅力的なまちづくり」が掲げられています。

さらに、2020年度から5年間の目標や施策の方向性等を取りまとめた「第2期『まち・ひと・しごと創生総合戦略』」には、「持続可能なまちづくりや地域活性化に向けて取組を推進するに当たって、SDGsの理念に沿って進めることにより、政策全体の最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果が期待でき、地方創生の取組の一層の充実・深化につなげることができます。このため、SDGsを原動力とした地方創生を推進する」と明記されており、政府がSDGs推進を地方創生の最重要指針と位置づけていることがわかります。

SDGs推進による持続可能な都市づくり事例

SDGs推進をとおした持続可能な都市づくりは日本国内でも進められていますが、海外でも積極的に進められています。ここでは、デンマークの首都コペンハーゲンの事例をご紹介しましょう。

コペンハーゲンでは、観光とMICEの促進・発展に取り組む公的観光組織「ワンダフル・コペンハーゲン」が主体となり、持続可能な観光開発の推進が進められています。既存の観光資源に頼るのではなく「地域の一員としての地元での体験が感動を呼ぶ」という考えのもと、コペンハーゲンを訪れた観光客がそれぞれのストーリーを語れるようにすることを目指し、観光客を誘致するだけではなく、観光客の動態調査によって弱みを見つけ改善する取り組みに力を入れています。

さらに、観光客増加によるオーバーツーリズムの問題を未然に防ぐため、施設は観光客専用ではなく市民も使えるものにするなど、市民ファーストの姿勢を強く打ち出しています。「観光業の成長が少なくとも8割以上の市民から支持されている」という評価指標が設定されていることからも、環境的な負荷だけでなく「社会的な摩擦を軽減する」という観点でのサステナビリティが強く意識されていることがわかります。

取り組みが始まったのは2007年頃ですが、デンマーク全体の宿泊観光客数は2009年に590万人であったところから、2017年には770万人へと約1.3倍に増加しています。さらに、コペンハーゲンで行われた国際会議の件数は、2007年の67件から2018年には125件へとほぼ倍増しています。

シティプロモーション(SDGs推進)ならJCSへ

SDGs推進によるシティプロモーションをお考えの自治体の皆様は、ぜひJCSへご相談ください。当社は、持続可能なまちづくりを“グローバル基準”で進めることが可能です。また、先に紹介した神戸市の事例のように、JCSは国際MICE施設の運営にも携わっています。地域や地元企業と一体となって国際会議や展示会などのビジネスイベンツの誘致・創出を行っているほか、様々なコンベンション運営で培ったノウハウを活かし、国際イベントのトータルプロデュースも担っています。詳しくはこちらのページをご覧ください。

まちづくりを通したシティプロモーション実績

当社は、数多くの図書館の運営をとおしてまちづくりに携わり、シティプロモーションに貢献しています。図書館での活動の一例として、子どもたちが楽しみながら外国の文化や言葉への好奇心や探究心を持てるよう、多言語おはなし会を実施し、国際社会での活躍を視野に入れた子どもたちの成長を応援しています。

さらに、医学会運営の実績を活かした医療セミナーを図書館で実施しているほか、医療情報展示コーナーの開設や専門ブックリスト提供などをとおして、地域住民の健康をサポートし生活の基盤を支える仕組みをプロデュースしています。

この他にも、教育施設や福祉施設へのアウトリーチ活動や地域連携事業など、特色ある取り組みで「みらいの図書館」づくりを進めています。

「日本の歴史公園100選」に選定された都市公園

当社は、東京都町田市の「町田薬師池公園四季彩の杜西園」の運営にも参加しています。これは東京ドーム3つ分ほどの大きさの大規模な都市公園で、「日本の歴史公園100選」に選定されたこともあります。JCSはインフォメーション棟のコンシェルジュを担当し、公園内の旬な情報提供や観光案内等を行っています。

JCSのまちづくりの実績やサービス内容についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

総括まとめ

シティプロモーションは、自治体の経済基盤を維持し、地域を活性化するための様々な取り組みを指します。日本をはじめ、人口減少が進む先進諸国で近年活発化しています。

特に、SDGsの推進をとおして魅力ある持続可能(サステナビリティ)なまちづくりを進めることは日本政府も奨励しており、今後ますます広がることが予想されます。この記事で紹介したようなサステナビリティ指標の活用も、次第に普及していくでしょう。

JCSは、国際会議の招致や国際MICE施設の運営、そして図書館の運営など、幅広い取り組みをとおして地域活性化やまちづくりに貢献してきました。さらに、GDS-Indexと戦略的連携協定を締結し、今後はSDGs推進によるシティプロモーションを積極的に推進していく計画です。よって、地域活性化や持続可能なまちづくり、SDGs推進に関するお悩みがありましたら、まずはJCSまで気軽にお問い合わせください。地域視点に立ったコンサルティングを行い、課題に適したソリューションを導入いたします。

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