コラム

2020.09.29

【通訳と翻訳】似て非なる両者の違い・活用法を徹底解剖!


通訳と翻訳は、言語を扱う「プロフェッショナルな職種」である点は共通するものの、実は全くの別物です。混同されがちなそれぞれの仕事内容や求められるスキル、そしてキャリア形成に関わる「重要な要因」について、本記事ではわかりやすく解説しています。

通訳や翻訳のサービスを検討している方にとっても、今後オファーする相手(通訳者・翻訳者)を見極めるヒントになりますので、ぜひ参考にしてみてください。

通訳と翻訳の違いを解説

まずは、仕事内容や働き方について具体的に見ていきましょう。

通訳者の仕事とは

通訳者とは、異なる言語を使う人同士が意思疎通できるよう、相手が話した内容を「聞き手が求める言語」に訳して伝える仕事です。翻訳との大きな違いは口頭での話し言葉を扱うという点です。会議や商談といったビジネスでの通訳、カンファレンスや国際会議、学会やシンポジウムといった大型イベントでの通訳、旅行客への観光案内通訳、法廷通訳、医療通訳など、活躍の場は幅広くあります。

通訳方式について

通訳の種類は大きく3つ「同時通訳」「逐次通訳」「ウィスパリング通訳」に分けられます。どの方式にも共通するのが、話者の声がよく聞こえる環境を整えることが良いパフォーマンスを発揮する要因となります。

同時通訳 「聞く」「訳す」をほぼ同時に行います。相当な集中力が必要な作業となり、業務時間にあわせ複数人数で15分程度毎に交代しながら訳出します。また適切な機材設備を使用することで、安定した通訳音声が届けられます。
逐次通訳 話者の発言の区切りごとに訳していきます。話者の発言→通訳→話者の発言→通訳と、話者と通訳者が交互に話すため、発言時間は1言語の会話内容の約2倍になります。
ウィスパリング通訳 通訳を必要とする1-2名の傍でささやくように通訳を行います。簡易機材を使用して複数名の方へ向けて通訳することが可能です。同時通訳の範疇となり、長時間の業務は複数人で担当する場合があります。

通訳者の働き方

次に、通訳の働き方について、大きく3つ取り上げたいと思います。

  • フリーランス

    大半の方がフリーランスとして働いています。JCSのような派遣会社に登録して仕事をもらったり、個人事業主として経営して活躍している人が多いです。IT・医療・金融など、様々な分野を経験して「実績」を積んでいくと、“新規案件”を紹介してもらえる機会が増えます。人柄や雰囲気がクライアントの評価に繋がるケースもありますので、身だしなみや作法に気をつけることも大切です。異なる分野の案件を日々対応するようになったら、自身で「事前準備」や「スケジューリング」を管理します。

     

  • 社内通訳

    通訳を募集している会社に入社し、通訳者として実務を積みます。正社員、契約社員、業務委託といった業務形態があります。日常的に通訳が必要な企業は、出費を抑えるため通訳者を「常駐」で雇うことがあります。イベントの参加や出張への同行など、企業によって仕事内容の幅が広いケースがあります。
    スキルを磨くため社内通訳として経験を積み、フリーランスへ転身する通訳者も多いです。

    【関連リンク】JCSの人材サービス

     

  • ガイド通訳

    通訳案内士、いわゆるガイド通訳として活躍するパターンです。外国人を日本各地へ案内し、文化や伝統、生活習慣などについて外国語を使って紹介する仕事です。一般的な通訳と混同されがちですが、発言する内容を自分で考えなくてはならないという点が、他の通訳者と性質が異なります。観光ガイドとしての役割も担いますので、旅行会社と契約したり、フリーランスで直接仕事を受けたりと、重要な任務を経験できます。

    【参考】一般社団法人日本観光通訳協会

翻訳者の仕事とは

翻訳者は、文書や動画を対象に、指定の言語から異なる言語へテキストで訳すのが主な仕事です。口頭での訳出とは異なり、目で見て評価されるため、細かいミスや誤訳が形として残ります。よって、通訳以上に正確性が求められるという特性があります。また、納期が決まっていることも違いの一つです。翻訳ビジネスは大きく3つに分けられます。

産業翻訳(実務翻訳) 企業や官公庁等で発生する技術文書、契約書、特許関連文書等の翻訳を指します。翻訳市場の9割は産業翻訳を占めており、最も仕事を得るチャンスがある分野です。
業界特有の専門用語を翻訳する力が必要です。
出版翻訳(文芸翻訳) 小説やノンフィクション作品、雑誌、児童書などの出版物を翻訳する仕事です。海外で出版された雑誌・書籍が対象になる場合が多いです。文芸作品は作者の意図を読み取り表現する力が求められます。
映像翻訳 映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品の音声を翻訳し、吹き替えのセリフや字幕を作成します。台本と映像を参照しながら、翻訳を行います。吹き替えのセリフを作成する場合は、口の動きや音声として分かりやすい言葉に訳し、字幕を作成する場合は瞬時に理解できるような言葉を使います。

フリーランスで働く際は、勤務地を選ばず自宅やカフェ、コワーキングスペース等で作業することなります。よって、自身の裁量で働く場所やスケジュールを調整することになりますが、柔軟な働き方ができる!という点では、メリットがあります。

通訳と翻訳に求められる能力とは?

どちらも語学のスキルを活かした仕事ですが、言語が堪能であれば通訳や翻訳の仕事がすぐにできるのでしょうか。実はそんな簡単な職種ではありません。帰国子女でバイリンガルであれば有利と思う方もいらっしゃいますが、海外を拠点に活動せず、国内での活動を通じて通訳・翻訳の仕事で活躍しているスペシャリストは大勢います。「語学が堪能」だけで成果が出せる職種ではないのです。では、どんな能力が求められるのでしょうか。

ここからは、通訳者、翻訳者それぞれに必要なスキルについて取り上げてみます。

通訳者に必要なスキル

  • 理解力、表現力

    当然の事ですが、外国語と同じだけ日本語力が求められます。相手が話した内容を瞬時に解釈し、趣旨や要点を理解して「他言語」に変換する能力が問われます。相手の状況や立場に応じて表現方法も変わり、話者の意図を誤解がないよう伝える必要があります。特に日本語は主語がはっきりしないまま話す人が多く、婉曲表現も珍しくないため、高度な理解力と表現力がパフォーマンスの鍵を握っています。

     

  • コミュニケーション力、判断力

    通訳が必要な会議やイベントでは「予想外のトラブル」が発生することもあります。海外講演者の到着の遅れや、ネットワーク障害によって生じる急なプログラム変更、英語堪能な日本人による予定していなかった英語での発言など、様々な事態に備える必要があります。これらの状況の中、柔軟に対応できる能力をクライアントは必要としています。

     

  • 情報収集力、調査力

    通訳パフォーマンスの質を保つために必須であり基本的なスキルです。仕事を受けたら、本番までに入念な準備が必要となります。事前に共有してもらう会議資料はもちろん目を通し、加えて「業界知識」や「社会情勢」などにアンテナを貼っておくと、突然のユーモアな発言や予定外の内容を話し始める話者に対して、柔軟な対応が可能になります。

翻訳者に必要なスキル

  • 読解力

    文書を扱う翻訳者ですので、原文を読解する力は最も重要です。例えば、翻訳対象の原文に「粗い要素」があったとします。主語や目的語が抜けていたり、背景や専門知識の情報がないと理解し難い内容だったりという状況は珍しくありません。よって、文章の趣旨・要点を的確に理解し、適切な表現で翻訳する能力が求められます。

     

  • 情報収集力、調査力

    通訳者と同じく翻訳者にも必要な力です。用途や分野に応じて辞書の使い分けはもちろん、日々各業界の最新情報や動向に目を向けておくことで、必要な知識をストックできます。短納期の場合はゆっくり情報収集している時間がないので、日頃から蓄えた予備知識が品質(文章のクオリティ)を左右します。

     

  • 自己管理力

    翻訳作業は地道で孤独な作業です。最大限のパフォーマンスを発揮するためには、スケジュール管理とマネジメントする力が重要です。2つ目であげた情報収集スキルを高めるための時間確保も自己管理力の一つです。日々の勉強と訓練が問われますので、短期間で養うことが難しい能力とも言えます。

キャリア形成は?

では、通訳者や翻訳者になるためにはどうしたら良いのでしょう。例えば、GoogleやYahoo!等の検索エンジンで「通訳 求人」「翻訳 求人」のキーワードで検索すると、100件以上の求人情報が表示されますが、そのほとんどが「3年以上の経験」が必須条件となっています。

よって、まずは「未経験OK」の募集要項をチェックしてみると良いでしょう。ボランティアの通訳・翻訳で経験を重ねることも推奨できます。例えば、インハウス(社内)の担当者としてキャリアを磨いた後、フリーランスに転じるというルートも王道です。

語学系の資格についてですが、実は言語に関わる「必要資格」が求められる募集要項はほとんどありません。語学に特化した専門学校の学歴有無が必要とされるケースも稀です。では、「何が重要なステータスになり得るか?」についてですが、押さえておきたいのは、上記でも述べた「経験・実績」や「人柄」です。特に通訳業界は、これらの要素を重視する企業・団体が多いのが特徴です。尚、個人で「自身」を売り込む活動はコネクションがある場合を除くと「効率性」が悪いため、エージェントに登録して仕事を斡旋してもらうのが良いでしょう。

実体験!通訳者や翻訳者のやりがいや苦労話

ここからは実際の通訳者・翻訳者に聞いた、仕事のやりがいや失敗談、苦労話など、リアルな声をご紹介します!

仕事のやりがい

通訳者Aさん
海外出張をことごとく回避していた大企業の社長。国際会議で通訳したのをきっかけに、海外出張はもちろん、突発的な案件にも同行させていただきました。その社長が在任中、海外企業との提携・買収などの話がいくつもあり、買収した会社に自ら出向き、社員に挨拶されるなど、就任直後には考えられないことだと秘書の方が評価してくださいました。これを機に、関連会社の案件を紹介いただいたりと、良好な関係を築けたのが嬉しかったです。社長が退任される時、「海外出張に連れ回して、ご主人にも随分迷惑をかけたから。」と、夫婦で会食にお招きいただけたので、お役に立てていたのだなぁ…と、実感できました。

通訳者Bさん
文化的背景の違いを橋渡しした通訳の仕事を成し遂げた!と思った時、お客様から「感謝の言葉」を頂けると、モチベーションは更に上がります。私は、話し手が伝えたい内容を日英両方の文化背景に合わせた表現で伝えるように心がけています。ですから、両方の文化をなるべくその環境の中で、生の状態で経験することは本当に貴重だと思っています。 今はコロナの影響で海外に行くことが難しいですが、海外の友人を通じてメディアがハイライトする「ニュースの裏」で、その国の一般市民が実際に何を感じているのか?を聞いたりしています。それらの情報が、最近の仕事でとても役に立った事があります。

翻訳者Cさん
多くの業界や企業を垣間見ることができ、これ以上面白い仕事はないと思っています。私の場合、育児と両立可能であることがこの仕事を選ぶ理由の1つでした。会社員時代ですが、産休から復帰して時短勤務や昇給を諦めてしまう同僚が多くいました。子供との時間と仕事、どちらも大切なことですから、早めに在宅で活躍できる仕事にキャリアチェンジしたのは本当に良かったと思っています。今では、専門性の高い原文を翻訳する際、色々と調べる作業過程でその内容に詳しくなれますので、知的好奇心を日々満たすことができています!

トラブルや失敗談!

通訳者Aさん
「トラブル」という言葉で思い浮かぶのは、最近激増したWeb会議です。会議の数と多様化する形態に比例して、トラブルも多くなっていると感じます。例えば「通訳者の声が全然聞こえない…」と言われ、血の気が引く思いをしたことがあります。原因を調べてみたら、お客様のパソコン側の音量設定ミスだったり、アクセス過多による音声品質低下が起因していたり、ミュートしていない参加者の声が重なっていたりと、問題も多様化してました。通訳者の技能と関係のないトラブルにより、通訳者の重要任務「伝える」というミッションが達成できなくなるのは、とても残念なことです。オンライン通訳の難しさを痛感しました。

通訳者Bさん
オンラインではなく、リアルの同時通訳の現場で起こしてしまった失敗の話です。私は通訳ブースに私物を忘れることが多く、ハンドバッグを置いたまま、書類バッグだけを手に持ち帰路へ向かったことがあります。その日、会場を出る直前に気づき、慌てて現場に戻ったら通訳ブースの解体作業が始まっていたので、現場の人たちに心配をかけてしまいました。同時通訳は、集中力をとても有する作業なので、1日が無事に終わった時に油断が生じてしまったのだと思います。仕事の資料を置き忘れて問題になった経験はないですが、今後は十分に気をつけたいと思います。

通訳コーディネーターから見る通訳者

通訳コーディネーターは、通訳者とクライアントの間に入り、要件整理や書類作成、スケジュール調整といった業務を担当しています。筆者は、通訳コーディネーターとしてこれまで2,000以上の案件を担当してきましたが、通訳者の皆さまの仕事ぶりを間近で見るたびに、その知識量や度胸に感服しています。

政治経済、医薬、IT、金融…あらゆる分野において、クライアントの皆さまが通訳者を必要とするシーンは、重要な局面を迎えている場合が多いです。新たな一歩を踏み出す時、素晴らしい情報を世に広める時、複雑な交渉を成し遂げる時、外交でプレゼンスを発揮する時など、ビジネスからカジュアルな内容まで多種多様です。主たるスピーカーの言葉を通訳する際の緊張感は想像を絶するものと察しています。通訳者という職種は、生涯現役と言っても良いほどで、60~70代で活躍している方も大勢います。そして、皆さん本当に勉強熱心なのです。常に学習意欲が高く、脳をフル活用している印象を受けます。刺激的な仕事と勤勉な姿勢が、若々しさの秘訣なのだろうなぁと見習う所がたくさんあります。

最大限のパフォーマンスを出してもらうために

最後に、通訳や翻訳のサービスを利用したい方向けに、効果的にご利用頂くためのポイントをお伝えしたいと思います。依頼後のトラブルを避けるために事前に確認すべき点、注意点を押さえ、役立てましょう。

通訳サービスを利用する時

依頼内容を明確に伝える

通訳者がステージに上がって人前で通訳するのか、同時通訳ブースにこもって通訳するのか、お客様側で描いているイメージを伝えて頂きます。そして、どんな相手(人)に向けた通訳なのか、案件の大まかな分野だけでなく、細かいトピックや目的・ゴール等の詳細情報を共有することで、案件と通訳者とのマッチング精度がより適切になります。通訳者の人柄や人物像などの希望があれば、こちらもぜひ伝えるようにしてください。

プログラムや発表資料は最新版を共有する

プログラムやアジェンダの資料に変更があれば、通訳者への共有も欠かさずに対応しましょう。特に「スケジュール変更」は、担当する通訳者の予定をブロックするためにも必須となります。通訳は「事前準備」がパフォーマンスを左右すると言っても過言ではありません。本番当日、通訳者の手元に「初見の資料」が突然出てきてしまうと、訳出のクオリティに悪影響が出る可能性がありますので、注意が必要です。

翻訳サービスを利用する時

期待内容を明確に伝える

想定読者や使用用途、緊急度や納期を明示しておくことが重要です。仕上がってきた翻訳が「何か違う。。」となるのは勿体ないですよね。どんな文体でどんな人向けの文書が良いのか、イメージ例があれば同様の書類を提示するのも良いでしょう。通訳サービスと類似しますが、要望を詳細に伝える事が重要です。

トライアル翻訳を利用する

翻訳を検討している文書の一部を無料で翻訳するサービスがあります。納品後のミスマッチを避けるためにも一度利用してみましょう。

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通訳や翻訳の依頼は、気軽にお問い合わせを!

通訳と翻訳の違い、参考になりましたでしょうか?JCSの語学サービスは通訳・翻訳・人材派遣と用途に応じて提案することが可能です。情報収集や検討段階でも、気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

Written by 髙橋 さゆり

日本コンベンションサービス株式会社
インターナショナルコミュニケーション事業部 会議通訳部

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