コラム

2021.09.30

特許翻訳とは?訳文の種類や特徴をわかりやすく解説!


日本の国際特許出願数は中国、アメリカについで世界第3位となり、国内での特許翻訳の需要は数多くあります。日本企業が外国へ特許を出願する際、その国の言語に提出書類を翻訳しなければなりません。特許翻訳は、高い翻訳スキルと法律や技術などの豊富な専門知識が求められる分野です。

本記事では、特許翻訳の特徴や種類、求められるスキルについて、初めて依頼する方にわかりやすく解説します。

特許翻訳とは?

特許とは、「発明」を保護する権利のことです。特許制度は、発明者が発明の内容を開示する代わりに、国が特許という権利を与えることです。特許権を取得することで、一定期間その発明を独占的に使用できます。

特許は、自動車、家電製品、スマートフォンなど私たちの身の回りのあらゆる製品に関わっています。もし特許を取得していないと、多くの労力と時間をかけて開発した発明がいとも簡単にまねされてしまい、自分の発明や技術を守ることができなくなってしまいます。特許権を得るためには、特許庁に発明の詳細を説明する書類を提出して、審査に合格することが必須です。

特許翻訳の特徴

特許翻訳とは、特許権を外国で取得するために必要な書類を翻訳することです。特許出願に関する書類には、特許明細書や特許庁から発送される通知書などがあります。発明の権利を主張する文書を扱うため、翻訳者には高度な翻訳スキルに加え、法律や技術に関する専門的な知識が豊富であることが求められます。

特許翻訳を必要とする人

主に特許出願人、企業の知的財産担当者、特許事務所の外国出願担当者などが当てはまります。

特許翻訳が求められる場面

特許翻訳は、特許権を外国で取得する場合必要になります。特許制度や法律は、国や地域によって異なります。仮に日本で特許権を取得しているからといって、外国でも発明や技術を独占できるとは限りません。そのため、特許権を外国で取得したい場合、出願書類をその国の言語に翻訳して提出する必要があります。

特許翻訳が必要な書類

特許翻訳が必要な代表的な書類は、以下の3種類です。

出願する際に必要な特許明細書

特許権を取得する際に特許庁へ提出する書類のひとつで、発明の内容を詳細に説明する文書です。外国で特許権を取得する際は、通常その国の言語ごとに翻訳された明細書を提出する必要があります。

特許庁から発送される拒絶理由通知書

特許審査の過程で特許を受ける基準を満たしていない理由が見つかると、拒絶理由通知書が発送されます。外国に出願している場合は、その国の言語で書かれた通知書を受け取ることになり、通知書の内容を理解するには、翻訳が必要となります。

拒絶理由を解消する意見書や補正書

拒絶理由通知書受け取ったままでは、特許権を取得することができません。そのため、出願人は意見書や補正書などの書面を提出し反論する必要があります。
意見書とは、拒絶理由に対する意見を述べるための書類です。一方、補正書は一度提出した明細書の記載内容を修正するための書類です。外国へ出願の際は、これらの書類も翻訳しなければなりません。

特許翻訳に求められる技術・能力

特許に関連する書類では、法律や技術に関する専門性の高い用語や表現が多く用いられます。そのため、高度な語学力はもちろん、技術的な専門知識の習得に日常的に取り組む必要があり、特許翻訳は他の分野に比べ翻訳の難易度が高いとされています。

独特の書式や表現ルール

特許明細書には独特の表現や文体、書き方のルールがあり、出願形式に沿って翻訳することが求められます。また、明細書の様式は出願する国や地域によって異なります。翻訳作業に入る前に、特許を出願するその国の指定様式を確認し、それに則り翻訳していくことがポイントとなります。

技術に関する知識、調査力

特許翻訳は発明に関する文書の翻訳となるため、翻訳者は発明コンセプトそのものへの理解を深め、技術内容の背景など翻訳の土台となる技術知識に加え、最先端の技術情報や用語の調査などを学習し続けることが求められます。

原文を正確に読み解く力

特許翻訳においては、主語と述語の関係を明確に理解し、原文に即した翻訳をすることが重要です。しかし特許文書の中には、主語と述語の関係がはっきりしていない文や、一文が長く読みにくい場合もあります。翻訳者には、こうした難解な文章を読み解き、忠実に翻訳作業を行っていくスキルが求められます。
また安易に意訳や省略を行ってしまうと、発明の技術内容が出願人の意図とは異なるものに訳されてしまう可能性があるため、細心の注意を払う必要があります。

特許×AI翻訳、実際使ってみたら?

最近では、AI翻訳を活用して翻訳を行うケースも増えてきています。実際に特許関連の文書をAI翻訳にかける場合のメリットとデメリットを解説します。

AI翻訳を活用するメリット・デメリット【一覧表でわかりやすく解説】

特許翻訳でAI翻訳を使う「メリット」 特許翻訳でAI翻訳を使う「デメリット」
  • 翻訳時間の短縮、コスト削減ができる
  • 法律用語や定型表現はAI翻訳でカバーできる
  • 事前に対訳の用語集を入れることで、ある程度用語の統一を図ることができる
  • 誤訳や訳抜けが生じる
  • 技術内容に深く踏み込んだ翻訳ができない
  • 発明者の意図を汲み取った訳出はできない
メリット
  • 翻訳時間の短縮、コスト削減ができる
  • 法律用語や定型表現はAI翻訳でカバーできる
  • 事前に対訳の用語集を入れることで、ある程度用語の統一を図ることができる
デメリット
  • 誤訳や訳抜けが生じる
  • 技術内容に深く踏み込んだ翻訳ができない
  • 発明者の意図を汲み取った訳出はできない

特許文書には、一文が長い、主語と述語が合致していないなどのケースもあります。こうした文章の翻訳をAIだけに頼ると、誤訳や訳抜けが生じます。AIは発明者の意図を汲み取って翻訳することができないため、支離滅裂な文章が出来上がることもあります。翻訳の品質が低いことが理由で特許出願が拒否されては、元も子もありません。

正確な翻訳文を作成するためには、AI翻訳を活用するだけではなく、AI翻訳後にポストエディット(人によるチェック)を実施することや、初めから人が翻訳することを推奨します。

特許翻訳ならJCSにお任せください

前述のとおり、特許翻訳においては、原文を正確に読み取る能力、技術の専門的な知識を持った経験豊富な翻訳者に依頼することが重要です。JCSは医学・製薬から機械・製造に至るまで、様々な分野の技術文書の翻訳経験を生かし、特許分野においても高品質な翻訳サービスを提供しています。

これまでの事業を通じて培った「コーディネート力」を活かして、お客様のご予算に応じた最適なアレンジが可能です。特許分野における数多くの翻訳経験と実績を持つ私たちに、ぜひ一度ご相談ください。

Written by 師岡 咲季

日本コンベンションサービス株式会社
ビジネスソリューション事業部 翻訳・ドキュメントサービス部

※本稿に記載している情報は執筆時点のものです。
 

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