イベント&講演

2022.03.09

LINE主催「LINE DEVELOPER DAY」が追求する、オンライン通訳の真価


主催者 LINE株式会社
開催内容 / 参加人数 LINE DEVELOPER DAY 2021 / 22,000名以上(Day1・Day2の累計)
開催形式 LINE LIVE (オンライン開催)
通訳方式 オンライン通訳(59のセッションを3言語で配信)

LINE DEVELOPER DAYは、LINE株式会社が年に一度開催する、企業主催では国内最大級のエンジニア向け技術カンファレンスです。2021年11月10日(水)・11月11日(木)の2日間、各業界のエンジニアや研究者、学生たちが、オンラインを通じて累計22,000名以上参加しました。LINEの多彩な技術者たちは、日本と海外(韓国・タイ・台湾等)に向けて情報発信し、最先端の技術・知識・挑戦を共有しました。

JCSは、本イベントの国際コミュニケーションを担う通訳を、2016年から6年連続で担当しています。そこで、本記事では、コロナ禍の影響を受ける前・後にスポットを当て、お客様が通訳に求める品質の定義を深掘りしました。オンライン形式のイベントで、通訳が果たす役割はどう変わるのか?新たに作られる価値は何か?主催者であるLINE社の担当者お二人をインタビュー取材しました。

インタビューに応えていただいた方

LINE株式会社 LINE Developer Successチーム
桃木 耕太 様


2013年に広報として入社。2016年から現所属であるDeveloper Successチームの活動につながる技術領域の技術領域関連の情報発信を担当。兼務として、LINE社全体の採用マーケティングを担当。

LINE株式会社 LINE Developer Successチーム
三木 鉄平 様


2016年に入社。Developer Successチームに所属し、エンジニア領域の広報や組織運営などに従事。現在は主に技術イベント運営、社内活性化施策の企画、教育プログラムの設計・運用、AI技術のブランディング等を担当。

コロナ禍で直面した課題感、通訳との
向き合い方

三木様 LINE DEVELOPER DAYは、2019年度まではリアル形式で開催していました。コロナ禍に入ってからは、オンライン形式に移行しました。大規模なカンファレンスをオンラインで開催するノウハウは、まだ私たちの中では十分に確立できていません。多くの協力会社の力をお借りしながら、ベストプラクティスを探っています。

LINE DEVELOPER DAYは、LINEの技術戦略やビジョン、取組事例などを紹介し、技術的観点のブランディングをグローバルに行うことが目的です。その目的を達成するためには、各セッションの内容を正しい訳文で発信し、聞き取りやすい音声品質で提供することが重要です。よって、JCSの通訳コーディネーターの方には、開催する年度ごとに、新たな仕組みや工夫の仕方についてご相談してきました。

2019年以前、リアル開催の様子
2019年以前、リアル開催の様子
2020年以降、オンライン開催の様子

通訳の品質は、イベントの開催目的に
直結している

桃木様 まず、私たちは「どうしたら、イベントの目的を達成できるのか?」という考えを優先しています。通訳という役割に求めるものも同じです。例えば、昨年は全てのセッションを事前収録し、通訳者にはセッションの映像資料を事前にお渡ししました。映像資料を前もって学習した上で実施する、通訳音声を動画に吹き込む方式を採用したのです。そうすることで、専門的な技術用語や社内の独自用語が飛び交う内容でも、通訳者の理解がより正確になります。品質を重視した通訳音声のチェック&改良が可能になると考えました。

三木様 イベントの開催規模が大きいと、多くの協力会社が運営に関わりますので、全体のスケジュールや進行に変更が生じる場合があります。通訳手配に関しても、柔軟な調整・アレンジをお願いすることが多いです。一般的には「音声の聞きやすさ」「ネイティブによる表現」「技術用語に対する知識」といった要素が、通訳の品質に要求されると思います。私たちの場合は、それらに加えて「イベントの進行プロセス・ゴール」についての理解や、柔軟な調整・アレンジに対応いただくことも、通訳の品質に繋がると思っています。

通訳者に求められる、具体的な
パフォーマンスとは

桃木様 正直、イベントの企画運営を行っている我々のチームでは、登壇者同等の深い技術知識と、正確な多言語理解の両立は難しいです。専門的な技術用語が日本語以外の言語(英語・韓国語)で表現された場合、内容が正しいかをその場で判断することはできないです。必然的に、訳文の正確さ・伝わりやすさは、通訳者に任せることになります。

したがって、通訳者のパフォーマンスを問われたら、参加者の評価やコメントで計ることになります。例えば、聞き手になる参加者の方から、「説明内容が正しく理解できなかった」といったコメントがあると、良い通訳とは言えなかったと判断します。2020年、2021年にオンライン開催したLINE DEVELOPER DAYでは、多くのセッションを事前収録し、学習期間を確保した上で通訳を手配しましたので、通訳に関わるネガティブな声は、アンケートやSNS等でもほぼ発生しませんでした。専門性の高い情報を得て理解を深めるというイベントの性質上、専門用語の訳が間違っている、講演者の発言から訳出が遅れる等、訳出に違和感があるとマイナスの声が多く上がります。それがほとんど無かったということは、イベントのクオリティ向上という観点で、とても大きな役割を果たせたと思っています。

プロ魂が成せる技、登壇者に向けた
アドリブの質問

三木様 グローバル企業である弊社では、社内外に向けて様々な取り組みを行う時、通訳者のサポートを必要とする場面が多いです。その対話をサポートしていただく通訳者には、事前の情報収集や下準備を徹底している「プロ意識」を感じることがあります。

例えば、AIがテーマの技術系セッションを通訳していただいた時のことです。当たり前の話ですが、通訳者は「技術者」ではありません。AIに関する知識・経験はそれほど深くないはずですが、専門用語を丹念に調べ上げて内容の理解を深めたり、不明点について登壇者へ事前に質問したりと、「プロ魂」が見られる場面がありました。そのような時は、期待以上のパフォーマンスを体感できますし、高いモチベーションで臨んでくださっていると思えるので、とても信頼できます。

通訳のオンライン化で、LINE社が得られた
成果

桃木様 イベントがオンライン環境へ移ったことで、プレゼンテーションやその通訳がリアルタイムである必要性は減り、事前収録を行うことで、通訳を介したセッションの質が良くなりました。結果、参加者に対して、高品質なイベントを提供できるようになりました。

また、イベントがオンラインへ移行した結果、登壇者が使う言語に依存することなく、日本以外からのアクセスも多く獲得できるようになりました。日本以外からの参加者が増えるようになると、外国語の音声クオリティを上げる重要度はますます高くなります。また、海外拠点などに勤務する方をはじめ、英語や韓国語を使用して発表する人が多いので、グローバルでイベントを盛り上げるために、通訳のさらなる改善は今後の機会でもしっかり考える必要があります。

通訳コーディネーターに期待すること

三木様 通訳のサービスがパッケージ化されていて、ソリューションが限られている委託先や担当者では、私たちが抱く課題解決は難しいと感じます。そんな中、前例のない相談をさせていただく時でも、好意的に検討してくれるJCSの通訳コーディネーター、濵﨑さんには、毎回助けられています。私たちと通訳者の仲介役として、双方のケアを丁寧にしてくださいますので、ありがたい存在です。

桃木様 打ち合わせをする時、濵﨑さんにはよく伝えているのですが、私たちは、コストバランスよりもイベントの価値を高める提案や協力を求めています。具体的な場合に限らず抽象的な場合でも、様々な要望に対して、フラットに意見・提案をしてくれる濵﨑さんの姿勢には信頼を置いています。

三木様 時代の潮流を受け、テクノロジーが益々発展している中、多言語による通訳音声のオートメーション化は年々実用に近づいている気がします。しかし、細かい個別のリクエストに対して最適解を探り、通訳品質を多角的に監修できる役割は、機械ではなく「人」でないと成立しないと思います。そして、関係各所をケアしてくれる人物がプロジェクトチームにいることも大切です。そんなパートナーと、私たちは長く付き合っていきたいと思っています。

濵﨑 「LINE DEVELOPER DAY」を担当してから、早くも4年が経ちました。通訳コーディネーターとして、一年を通して数多くのイベントに携わりますが、「LINE DEVELOPER DAY」は、その中でも特に頭をフル回転させ取り組んでいるイベントの一つです。既存の枠にとらわれることなく、時代を先取りするような新しい通訳サービスの在り方や、イベント開催方法を関係者全員で作り上げていくことに大変魅力を感じています。LINE株式会社の桃木さんと三木さんは大切なお客様でもあり、「LINE DEVELOPER DAY」のチームメンバーでもあります。今後もメンバーの一員として共に挑戦できることを楽しみにしています。

日本コンベンションサービス株式会社
インターナショナルコミュニケーション事業部
会議通訳部
濵﨑 幸菜


2016年入社。通訳コーディネーターとしてこれまで2,000件を超える案件を担当。閣僚級会議を始め、多岐にわたる業界のイベント、学会、社内会議等において、従来の考えに捉われず先鋭的な通訳の在り方を追求し、通訳者のコーディネートを行う。

【直近のコーディネート実績例】

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