コラム

2019.11.05

図書館の地域交流から「レファレンス」に繋げるモデル事例


図書館は「本を借りる場所・勉強をする場所!」という一般認識が変わり始めています。この記事では、図書館を“地域交流の場”として位置づけ、数多くのイベントを企画・開催している「大田区立久が原図書館」の事例をご紹介します。2015年より、JCS(日本コンベンションサービス)が指定管理者として管理・運営しているこの図書館では、地域交流が期待できるイベントから派生するレファレンスの促進(積極的な本の検索・提供)を行なっています。

区民ボランティアと協働したイベント

地域交流を重視している久が原図書館は、イベント開催時に区民のボランティアの皆さまと協働して取り組んでいます。多様な世代から立案されたアイデア・企画は、多くの区民の“新しい交流の機会”を創っています。例えば、毎年開催される「久が原サロン」というイベントは、ボランティアメンバーが積極的にプランニングしている人気企画の1つです。毎年継続して開催をしている「本のリサイクル市」では、小説をはじめ、旅行本、レシピ本、絵本など、図書館で役目を終えた本や雑誌を無料で配布し、多くの参加者から好評のコメントを頂きました。2019年度は「筆ペンで名前を上手に」という筆ペン書きのコツを学ぶ実用体験講座の実施が決まり、 11月に開催予定です。

図書館の館長:森本氏が推奨する3つのポイント

きっかけ作り

きっかけひとつで、新しい分野に興味を持ち、世界が広がる。久が原図書館では高校生以上を対象に「臨床美術体験講座『脳がめざめるアート塾』」を実施。「アートは難解、敷居が高い」と思う人たちに対して、「絵画教室と異なるアプローチのため、絵画に関する知識・経験は一切問わない」要素をアピールしたことで、多くの参加者が集まりました。

新しい体験

未知の体験は、年代を問わずワクワクするものです。そこで久が原図書館では「身近で触れる機会が少ない、ひのきを使った物作りイベント」を実施。「組み木コースターとお箸作り」の講習会は、多くの方から好評の声をいただきました。東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた”和のおもてなし”がコンセプトです。

新たな学び

参加者には、体験を通じて新たな「気づき」や「学び」を持ち帰ってほしいと考えています。そして「気軽に立ち寄れる身近な場所」=「図書館」というイメージを、区民ボランティアと協働したイベントを介して訴求することで、利用登録者は増加しています。結果、本の貸出やレファレンスの活性化に繋がるのです。

イベント参加者の声

  • 私は80歳を過ぎていますが、家族がこの講習会を教えてくれました。思い切って参加して良かったです。

    こういったイベントを中心に地域活動をしてほしいです。交流の場を作ってくれて嬉しかったです。

    スタッフの皆さんありがとうございます。イベントの企画に関わった人はボランティアですか?子育てが落ち着いたら参加したいです。

    子どもたちの日曜日が楽しいものになりました。次回開催も期待しています。

利用者の拡大は「利用者のアイディア」を具体化すること

イベントを開催して多くの人に体験を提供した後は、司書の腕の見せ所です。「レファレンス」に上手く繋げることで、図書館は市民と本を結び付け、利用者は本が持つ魅力・楽しさを再認識することができます。利用時間や本の貸し借りの特性のみに注目するのではなく、地域の特徴を活かした企画を実施していくことが大切です。これらの活動を踏まえることで利用者の創出に繋がり、新しい図書館の価値創造にスケールが広がっていきます。

大田区立久が原図書館

1984年10月に開館。以来、地域に愛される図書館として多くの区民の方が利用されています。外国の絵本(三枝コレクション)を多く所蔵し、また全国の電話帳を収集していることも特色としています。

編集後記

インターネットやSNSの普及により人々のライフスタイルが変化する中、図書館を「地域交流の場」にするためのポイントを紹介しました。JCSは、地域の特性や目指す姿を理解した上で30を超える公共施設を運営していますので、何かお悩みや不明点がありましたらお気軽にご相談くださいませ。

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