コラム

2016.08.10

国際資格CMPのコラム第17弾「COORDINATE FOOD AND BEVERAGE SERVICES」


当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第17弾。学会参加者に学会の印象についてアンケートを取ると、半数以上がパーティーや昼食の食事内容に関するコメントであることは珍しくありません。それくらい、イベントにおける料飲手配というものは重要です。今回は、飲食手配やメニューの選択、サービススタイルについて取り上げ解説します。 

CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。

SKILL 16: COORDINATE FOOD AND BEVERAGE SERVICES
Sub skill 16.01 – Determine Food and Beverage Service Requirements
Sub skill 16.02 – Select Menu(s)
Sub skill 16.03 – Plan Service Style(s)
Sub skill 16.04 – Select Food and Beverage Provider(s)
Sub skill 16.05 – Manage Alcohol Service

CMP出題頻度:4~ 6問(合計150問)


学会参加者に学会の印象についてアンケートを取ると、半数以上がパーティーや昼食の食事内容に関するコメントであることは珍しくありません。それくらい、イベントにおける料飲手配というものは重要です。日本の場合は会場の指定サプライヤーからの提案ベースで料飲内容を決めることが多く、プランナー自身がその内容について深く考える機会は少ないかもしれません。ここでは主なポイントのみ解説しますが、CIC 9th manualにはその定義やルールが細かく記載されていますので、興味のある方はぜひ原典をご覧ください。

料飲手配を行う際の留意事項

Sub skill 16.01 – Determine Food and Beverage Service Requirements

イベント開催時にはさまざまな料飲提供機会があります。朝食、リフレッシュメント、昼食、レセプション、バンケットなど、それぞれに複数の提供方法があり、留意すべきポイントがあります。たとえば、昼食の時間帯に講演を予定しているならビュッフェ形式は避けること、リフレッシュメントは休憩のみならず参加者同士のネットワーキング促進を目的として実施すること、ビュッフェの混雑を緩和するためにはテーブルの両側から料理を取ることができるようにすることなどです。 会場やケータリング業者を選ぶ際、海外ではサステナビリティ(sustainability)がその指標のひとつになりつつあります。具体的な行動指標としては下記のようなものがあります。・地元の新鮮な食材、旬の食材を選ぶ。(地産地消)・サステナブル認証を取得した魚介類を選ぶ。OceanWise(カナダ)、the Monterey Bay Aquarium Seafood Watch(米国)、the Marine Stewardship Council(英国)といった枠組みがあり、日本でも2020年に向けて整備されていく可能性があります。

  • 余った食べ物の処理方法については地域ごとの法令に従う必要がありますが、海外ではコンポストを行ったり、寄付する場合もあります。
  • 個別包装の食べ物は避ける。また、料飲内容を決定するためには、参加者の属性(attendeeprofile)を配慮することも重要です。過去のデータがあれば有用です。
  • 年齢層、性別
  • 経済レベル
  • 食事制限(宗教、アレルギーなど)
  • 時差(特に初日レセプション)
  • 文化の違い

食事制限については参加登録時に禁忌事項の回答欄を設けます。よく見られるのは下記のようなリクエストです。体質によっては重篤となる場合もありますので、緊急連絡先の回答欄も設けます。

  • アレルギー(ナッツ、甲殻類など)
  • セリアック病・グルテンフリー
  • 乳糖不耐症
  • ベジタリアン、ビーガン
  • 減塩・低脂肪
  • 低カロリー

着席式の場合は宴会担当者を通じて厨房やサービスのスタッフにこれらの情報を共有するようにします。特定の席札を用意しておくと便利です。ビュッフェの場合はそれぞれの料理に食材表示を設けます。
ところで、日本ではまだあまり浸透していない、世界的なケータリングのトレンドがあります。立食のレセプションでサービススタッフがタパスやピンチョスなど一口サイズの料理を勧めて回る、バトラーサービスというものです。これだと参加者はさまざまな種類の料理を楽しむことができますし、ネットワーキングを中断させることもありません。ただし、これは長時間のネットワーキングや、着席してじっくり話をしたい参加者には不向きなので、ウェルカムカクテルでの起用が多くみられます。

メニューの選択

Sub skill 16.02 – Select Menu(s)

具体的なメニュー内容については、通常は定番のメニューと、さまざまなオプションが用意されています。宴会担当者やシェフと相談して、あなたのイベントに合わせたメニューを選択してください。
参加者属性によって、メニューの嗜好や習慣は異なります。たとえばヨーロッパや南米では昼食から前菜・主菜・デザートの3品とワインが出てくることが多いのですが、北米ではあまり見られません。夕食の開始時間も、北米は18時30分頃から、南米やヨーロッパは20時頃からということが多いです。朝食についてはヨーロッパではデニッシュやパン、チーズが中心である一方、北米では卵やフルーツ、シリアルなどを好みます。
参加者のより活発な議論を促すため、脳が活性化する健康的なメニューを求める声もあります。低GI、減塩、なるべく加工食品を避けて新鮮な地元の食材を選ぶなどです。このあたりは個人的主観によるところも大きいので、いずれにせよプランナーとして求めることを明確に伝えて、よりよいメニューを提案してもらいましょう。
発注にあたってはギャランティを相互確認する必要があります。北米の場合、48-72時間前までに発注ギャランティ人数を伝えます。支払の段階ではギャランティもしくは実際の利用者数のいずれか高い金額を支払います。厨房サイドでは、ギャランティの5~ 10%増までは対応できるようオーバーセッティングの契約を交わしておくことが一般的であり、また、こうした契約がなくても、厨房では通常5%増に対応できる体制を整えていることが多いのだそうです。

サービス・スタイル

Sub skill 16.03 – Plan Service Style(s)

食事のサービススタイルには表1(右)のような形式があります。CMP試験には高確率で出題されますので、受験する方は覚えておきましょう。


ページ構成の都合上、sub skill 16.04-05は省略させていただきました。興味のある方、業務上必要のある方は、ぜひCIC9th Manualの原典を読んでみてください。
ところで以前、パリで開催されたIAPCO(国際PCO協会)総会に参加した際、ガラディナーがベルサイユ宮殿で開催されました。前菜・主菜・デザートの3品というシンプルなメニュー構成ながら、ディナーの格を決める良質のワインと数々のガラスの花瓶を並べたセンス抜群のテーブルセッティングで、一生の想い出に残るひとときとなりました。
ユニークベニューの活用には、こうしたセンスのある料飲手配・演出が欠かせないものですが、日本にはまだこうした国際会議のパーティーに対応するケータリング専門会社が不足しています。IAPCO総会は2018年に東京で開催されることが決まっていますが、東京ではどのような演出ができるのか、コングレさんとともに検討を進めていきたいと思います。

表1. サービススタイル

Butler service トレイに載せた一口サイズの料理と飲み物をサービススタッフが勧めて回る。参加者のネットワーキングを妨げないことから、世界的に人気のある方法。
Plated service 着席サービス。サラダなどはあらかじめテーブルにセットしておき、主菜をスタッフが配膳する。廃棄率が高いことが難点。
Buffet ビュッフェ形式。参加者がテーブルの片面から取る方式と両面から取る方式があり、両面のほうが混雑緩和に役立つ。片側にサーブスタッフが立つことをcafeteria serviceという。
Food stations 料理の種類によってビュッフェテーブルを分ける方式。ベジタリアンやハラル対応に便利。その場でシェフが料理を切り分けることをaction stationという。
Concessions 売店方式。通常は開催施設の商業飲食店舗が参加者に対して直販する。
Family style service(English styleservice) テーブルごとに大皿の料理が配られて、参加者が自分で取り分ける方式。ネットワーキングに効果的。
French service 特定の料理についてはテーブル脇で取り分けてサーブする方式。経験を積んだスタッフを必要とする。時間がかかるので、大人数のイベントには不向き。
Russian service すべての料理をテーブル脇で取り分けてサーブする方式。レストランでよく見られるが、イベントではまず採用されない。
 
  • 押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)

    Action station ---------- (ビュッフェの場合の)調理卓

    Banquet event order (BEO) ---------- 施設・ホテルへのオーダー表

    Butler service ---------- バトラーサービス

    Cafeteria service ---------- 対面サービス方式ビュッフェ

    Concession ---------- 売店からの直販方式

    Exclusive provider ---------- 指定業者

    Family-styie (or English) service ---------- 大皿とりわけ方式

    French service ---------- フレンチ・サービス

    Food safety ---------- 食品安全

    Russian service ---------- ロシアン・サービス

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