コラム

2026.09.29

イベントは“伝える場”から“体験してもらう場”へ


Dorier Japanに聞く、JCS×Dorier Japanが実現する空間体験設計

企業の理念や新商品に込めた思いを伝えるビジネスイベントでは、参加者に「何を伝えるか」だけでなく、「どう体験してもらうか」がますます重要になっています。企画として魅力的でも技術的に実現しにくい、あるいは演出として印象的でも運営上成立しにくい——こうした課題に対応し、実現性の高い体験を設計するには、企画とテクニカルが初期段階から一緒に考えることが欠かせません。JCSは、グループ会社であるDorier Japan株式会社と連携し、企画・運営と映像・音響・照明などの専門性を掛け合わせながら、空間体験設計まで一体的に支援しています。今回は、Dorier Japan 長門 亜希子に、グローバルビジネスイベントのトレンドや、JCSとの連携で生まれる価値について聞きました。

グローバルビジネスイベントは「伝える場」から「体験してもらう場」へ

世界各国から企業や人が集まるグローバルビジネスイベントは、ビジネスの機会を広げるだけでなく、企業のブランドや姿勢を体現する場にもなっています。そのあり方も、時代とともに変化していると長門は話します。

「これまでは、登壇者の話や発表内容を正確に届けるために、メインステージとスクリーンを軸に据えた会場づくりが中心となる場面が多くありました。もちろん今もそれは重要ですが、近年は、会場に入った瞬間から会場をあとにするまで、イベント全体を“ひとつの体験”としてどのように設計するかという視点が重視されていると感じます」

こうした変化は、日本国内に限ったものではありません。海外の大規模テックイベントやグローバルカンファレンスでも、基調講演、展示、デモ、ネットワーキングなど複数の接点を通じて、主催者のメッセージを会場全体で表現する傾向が見られます。

「たとえば、登壇者がステージ上で『私たちは革新的な企業です』と伝えたとします。そのメッセージをより深く届けるには、言葉だけでなく、会場に入った瞬間の体験、プレゼンテーションの見せ方、テクノロジーの使い方にも一貫性を持たせることが重要です。そうすることで、参加者はその企業の革新性を、情報として理解するだけでなく体感できます。空間体験設計の大きな役割は、言葉と体験を一致させることにあると考えています」

主催者側には、新しい戦略を社員に伝えたい、新製品を印象づけたい、ブランドへの理解を深めたいといったビジネス上の目的があります。一方、参加者側には、新しい発見や交流、その場でしか得られない体験への期待があります。Dorier Japanは、主催者のメッセージや目的を、参加者が理解し、感じられる体験へと落とし込む役割を担っています。

オンライン時代だからこそ問われる、リアルイベントの価値

オンラインイベントが広く普及したことで、リアルイベントには「わざわざ現地に行く理由」がより強く求められるようになりました。情報を届けるだけであれば、オンラインでも多くの目的を達成できます。だからこそ、同じ場所に集まることで生まれる空気感や偶発的な交流、共通体験の価値が改めて見直されています。

「会場が暗くなり、音楽が少しずつ高まり、何百人、何千人もの人が同じステージに意識を向ける。その瞬間の熱気を同じ場所にいる人同士で共有できることは、リアルイベントならではの価値です。展示を見ながら意見を交わしたり、終了後に『あれは面白かったですね』と会話が生まれたりすることも、リアルの場だからこそ広がりやすい体験だと思います」

リアルイベントには、情報を伝えるだけでなく、参加者同士の記憶に残る共通体験を生み出す力があります。その体験をどう設計するかが、企業イベントや国際会議の成果を左右する要素になっています。

世界水準の体験を、日本の会場・運営条件に合わせて実装する

空間体験設計の重要性が高まる一方で、主催者が抱える課題も複雑になっています。AI、グローバル感、参加者同士の交流など、実現したいテーマはあっても、それをどのような空間やコンテンツ、テクノロジーで表現するべきかには専門的な視点が必要です。

「LED、プロジェクションマッピング、映像、音響、照明、ライブ配信など、イベントで活用できる技術や表現の選択肢は増えています。ただし、新しい技術を入れること自体が目的になってしまうと、主催者のメッセージと、その空間で得られる体験とのつながりが弱くなることがあります。技術は、目的や伝えたいことをより分かりやすい形で参加者に届けるための手段として選ぶことが大切です」

Dorier Japanの強みのひとつが、Dorier Groupのグローバルネットワークです。Dorier Groupは、ジュネーブ、モントルー、東京、シンガポールに拠点を有し、それぞれが世界各国のイベントに携わっています。この海外のイベントデザインやAV技術の知見に、JCSが国際会議・学術集会・グローバルイベントで培ってきた企画・運営力を掛け合わせることで、日本の会場条件や運営環境に合わせた、実現性の高い体験づくりにつなげています。

「国を越えて知見を共有できることは大きな強みです。また、多言語対応が可能なため、海外企業が日本でビジネスイベントを行う際にも、スムーズにプロジェクトを進行できます」

海外でトレンドとなっている技術や表現を、そのまま日本へ持ち込めばよいわけではありません。会場の設備や安全面の対応、参加者の特性、主催者の目的、当日の運営方法まで踏まえて最適化してこそ、体験として実現できます。海外の知見を取り入れながら、日本の実施環境で無理なく機能する形へ落とし込めることが、JCSとDorier Japanが連携する大きな価値です。

「Dorier Groupは、同時通訳システムや映像・音響機材を軸としたソリューションから事業を広げてきました。現在も最新の技術を積極的に取り入れており、会議で生まれたアイデアを、自社の倉庫で実装を想定して検証できます。体験設計と技術実装の距離が近いことは、Dorier Japanの特長といえます」

JCS×Dorier Japanで実現する、企画・運営・空間体験設計の一体支援

JCSとDorier Japanの連携は、「JCSが企画し、Dorier Japanが実装する」という分業ではありません。企画として魅力的でも技術的に難しい、あるいは演出として印象的でも運営上成立しにくいという課題を防ぐため、両社が企画の初期段階から同じテーブルで目的と条件を共有します。企画・運営と空間演出・テクニカルの視点を最初から掛け合わせることで、魅力と実現性を備えた体験設計へつなげています。

「案件によって関わり方はさまざまですが、企画の立ち上げからDorier Japanが関わることで、会場の特徴を生かした体験やステージの見せ方、海外事例を踏まえた提案ができます。企画、運営、空間体験設計を別々に考えるのではなく、JCSとDorier Japanが同じゴールを共有しながら進められることが、お客様に提供できる価値だと思います」

「JCSには国際会議やグローバルビジネスイベントを多く手掛けてきた実績があり、Dorier Japanには最新技術やトレンドに対する知見があります。業界やイベントの特性に応じた表現を大切にしながら、新しいアイデアを取り入れられる点も、両社が連携するメリットです」

阿波踊りを、記憶に残る体験へ

JCSとDorier Japanが連携した事例のひとつが、2025年3月に神戸コンベンションセンターで開催された「第22回日本臨床腫瘍学会学術集会」における屋外ホスピタリティイベント「神戸ナイトピクニック – Discover the City’s Hidden Charms –」です。JCSは運営を担当し、Dorier Japanは空間照明や装飾演出など、会場体験づくりの一部を担当しました。

「このプロジェクトには大きく2つのテーマがありました。ひとつは、参加者がくつろげるスペースを会場内につくること。もうひとつは、主催者の中にあった“阿波踊り”というアイデアを、空間体験設計の中でどのように生かすかという点です。そこで考えたのが、阿波踊りを起点にした空間づくりでした」

Dorier Japanは、屋外にステージとテーブル、イスを配置し、周囲に徳島の阿波踊りをイメージした提灯タワーを設置。ステージ照明では、LEDやプロジェクターを使用し、阿波踊りの動きに合わせた躍動感のある演出を行いました。単に演目を見せるのではなく、会場全体の照明、装飾、動線に一貫したテーマを持たせることで、参加者が日本文化を自然に体感できる場として設計しました。

「学術集会の品格を保ちながら、海外からの参加者にも日本文化を感じていただける時間をつくることができました。演目を見るだけの余興ではなく、提灯、照明、ステージ、テーブルやイス、動線までをひとつのテーマでつなぐことで、参加者が会場に身を置きながら日本文化を体験できる場になりました。主催者の中にあったアイデアを、参加者の記憶に残る体験へと変換できた事例だと感じています」

企画の初期段階から相談できるパートナーへ

ビジネスイベントを企画する際、最初からLEDやAIなどの手段を決める必要はありません。大切なのは、参加者に何を感じてもらいたいのか、何を持ち帰ってほしいのかを明確にすることです。

「目的が見えてくると、必要な空間演出やテクノロジーも選びやすくなります。具体的なアイデアがまとまっていない段階でも、目的の設定や整理からご相談いただけます。JCSとDorier Japanは、安定した運営力を土台に、参加者の印象に残る体験をつくりたい主催者の方に寄り添えるチームだと思います」

JCSとDorier Japanが目指しているのは、決められた企画を形にするだけの関係ではありません。「参加者に何を感じてもらいたいか」という企画の初期段階からともに考え、JCSの企画・運営力とDorier Japanの空間体験設計を掛け合わせながら、そのイベントならではの体験へと具体化していきます。「まだ具体的な演出は決まっていない」「海外事例を日本で実現できるか相談したい」といった段階からでも、ぜひご相談ください。

社員プロフィール

長門 亜希子

2007年入社。翻訳・ドキュメントサービス事業の営業として多様な顧客のプロジェクトを担当。その後、営業企画部門で大型プロジェクトや新規領域開拓、部門横断型プロジェクトの立ち上げに携わる。2023年よりDorier Japanに参画し、企業イベント、学術集会、国際会議における体験設計やテクニカル領域の提案を担当している。

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