コラム

2026.02.16

大阪・関西万博シンガポールパビリオンを成功に導いた、JCSとKingsmenの緊密なパートナーシップ


大盛況と共に幕を閉じた2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場で、ひときわ来場者の目を引いていたのが、巨大な赤い球体。それこそが会期中盤で早くも来館者100万人突破を実現したシンガポールパビリオンです。

盛況の理由はさまざまですが、来館者が快適に、滞りなく展示を体験できた背景には、JCSとKingsmenの緊密な連携がありました。

Kingsmen Exhibits Pte Ltd シンガポールパビリオン現場責任者 ポール・ヘイニー氏とJCSプロジェクトマネジャー アニー・リュウの二人に成功の理由を聞きました。

プロジェクトは、シンガポールパビリオンの運営

赤い球体に来館者が一歩踏み込めば、そこはシンガポールの多彩なアーティストがつくり出したイマーシブ空間。垂れ下がるテープのようなオルゴールが魅惑的な調べを奏で、シンガポールの植物を模した切り絵が創出した光の世界が広がります。また、カフェ&バーやショップでは、シンガポールの豊かな食文化を楽しめ、シンガポールの国としての取り組みを余すところなく体験できるパビリオンになっています。


なかでも人々に大きな感動を与えたのが、来館者一人ひとりの夢がつながってアートの一部として表現される「ドリーム・リポジトリ(夢を描くところ)」。来館者の描いた夢が「ドーム(夢を見るところ)」に舞い上がっていく様子は、まさに「ゆめ・つなぐ・みらい/Where Dreams take Shape」のコンセプトを形にしたものでした。

Kingsmenが徹底的に意識したこだわりを実現するために、パートナーに選んだ企業

  • 印象的な赤い球体は、17,000枚を超えるリサイクル・アルミニウム製の「ドリーム・ディスク」で構成され、ディスクが重なり合うパターンは、日本の伝統的な「青海波(せいがいは)」の波模様と、願いや想いを込めて書き記す「絵馬」から着想を得たもの。  印象的な赤い球体は、17,000枚を超えるリサイクル・アルミニウム製の「ドリーム・ディスク」で構成され、ディスクが重なり合うパターンは、日本の伝統的な「青海波(せいがいは)」の波模様と、願いや想いを込めて書き記す「絵馬」から着想を得たもの。 

シンガポール発祥の体験型クリエイティブ企業Kingsmen Exhibits Pte Ltdは、アジア圏において巨大なネットワークと実績を併せもつ1976年設立のKingsmenグループの一員で、アジア太平洋地域、中東、米国など世界21か所にオフィスを構える、グローバルな展示・イベント制作会社です。その優れたクリエイティブは、国際的な賞の受賞という形でも広く知られています。一方、その繊細かつ細かいこだわりで実現する世界観の実現は、非常に難しいものだと考えられていました。

―シンガポール政府から委託を受けて、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)でシンガポールパビリオンを手がけることになったとき、KingsmenはなぜJCSをパートナーに選んだのでしょうか?

ポール
「没入型体験、イノベーション、そしてシンガポールらしさを融合させたパビリオンの実現。この万博のプロジェクトに際し、私たちの基準に見合い、一体感を感じるチームを編成、常に迅速で、高品質なサービスを提供できるパートナーが、Kingsmenには必要でした。

私たちがまず評価したのは、これまで大規模で注目度の高い国際イベントを、確実に実行してきたJCSの実績です。50年前の大阪万博の成功をはじめ、「G7サミット」から「ワールドカップ」まで国際イベントを支えてきたJCSの、精度の高い仕事ぶりと創造性を兼ね備え複雑でスケールの大きなプロジェクトをやり遂げてきた実績は魅力でした。

そこから念入りにリサーチとシミュレートを行い、実績を裏打ちするJCSの優れたオペレーション能力を把握しました。ラストピースは、来館者を魅了したいという、私たちの根底にあった想いに深く共感してくれた点です。

シンガポールの卓越したテクノロジーとストーリーテリング、来館者とのインタラクティブな交流を生むパビリオン。その運営を任せられるパートナーはJCSしかいないないと感じました。細部の表現へのこだわりやあらゆる事態への迅速な対応を可能とし、多様な来館者にイマーシブな体験を提供するという理念にもっとも合致した企業が、JCSだったのです。」

来館者動線管理、セキュリティ、清掃を含む全体運営をシームレスに統括したJCS

―シンガポールパビリオンの運営において、JCSの役割は、来館者へのサービス提供及び動線管理、セキュリティ、清掃を含む全体運営の統括でしたが、目標はどのようなものを掲げていたのでしょうか?

アニー
「パビリオンのコンセプトを理解するだけでなく、心の底から楽しめるようにすることが最も大切で、その実現のため、Kingsmenチームやセキュリティ・清掃を支援するチームと密接に連携し、全員の認識と行動を一致させることに集中しました。

ただ、来館者が多くなればなるほど、運営サイドの業務も増えていくものです。ガイドの配置、誘導や説明、混雑状況による入場人数の制限など、多くのスタッフの連携がスムーズに運んでこそ、来館者は快適に過ごすことができます。

そこでポイントとなったのがPDCAのサイクルの高速化です。オペレーションが日々更新されるなかで、スタッフ全員が一堂に会する情報共有の場は1日2回(始業時・就業時)。その場で各自の役割を明確にし、それぞれの責務に集中することが必要で、同時に全体最適化も意識しなくてはなりません。全員が見られるホワイトボードや紙ベースのお知らせなどのオフラインの伝達媒体も、現場では重要な役割を果たしました。これらの施策を実施し、検証を繰り返す毎日でした。」

―JCSのプロジェクトマネジャーを務め、パビリオンの現場では、ポール氏と毎日のように対面して仕事を進める機会が多かったと思います。彼の印象はどうでしたか?

アニー
「グローバルで名高いKingsmenグループですが、とても協働しやすい会社に思えました。同社でさまざまな現場を統括してきたポールはまさにプロフェッショナル。達成すべきことを明確にし、論理的に考察を積み上げていく人物です。何か問題が起きれば、その根源を特定し、もっとも効率的に解決策を導き出す能力は、まさにプロジェクトを円滑に進めるための最高のパートナーでした。」

―万博プロジェクトに取り組むポール氏の、力強く、協力的にサポートしてくれる姿勢は、同じ目的に向かって進むパートナーとして心強く、大きな推進力になりますね。 とは言え互いに理想を求める中、意見が合わないことはありませんでしたか?

アニー
「改善したい、良くしたいという気持ちは一緒なので、率直にお互いの意見を言い合えるいい関係性を、会期中、常に保てたと思います。」

ポール
「確かにアニーはとてもストレートな物言いをしてくれる人物。何事もクリアに説明してくれるので非常に助かりました。嘘偽りの無さが伝わってくるので、非常に協働しやすい方だと思いました。」

突然のアクシデントは必ず起こる。それに冷静に対応するのがJCSの強み。

―パビリオンの開催期間には思わぬアクシデントも起きたと伺いました。

アニー
「アクシデントは何かしら起こります。そのためJCSは事前に詳細な運営マニュアルを用意していますが、計画通りにいかないことももちろんあります。例えば、最初の数カ月間にいくつか緊急避難のアラーム(誤報)が鳴りました。安全な誘導、来館者を不安にさせない言動がスタッフには求められます。いずれのときも、緊急時の対応マニュアルに準じたオペレーションと、KingsmenとJCSが一丸となった緊密な連携で、来館者を迅速かつ安全に避難させることができました。また、今年は想定以上の猛暑が続きましたが、体調不良者を少しでも減らすために塩あめを配布したり、炎天下での待機列対策(大屋根リングへの誘導など)を行うなど、細かい工夫やアレンジも日々行っていました。」

ポール
「JCSチームの対応力、何よりも来館者にパニックを起こさせない冷静さに加えて、的確な誘導。いかなるストレス下であっても迅速に状況を把握し、来館者の安全を第一に考える姿勢に驚かされました。そして、そうした姿勢を、アニーをはじめとするリーダースタッフたち自らが模範となり、新たなスタッフに伝える姿勢もとても印象的でした。」

アニー
「その背景にあるのはスタッフ育成です。新たなスタッフには、私たちの事業であるMICEやホスピタリティのバックグラウンドだけでなく、現場で必要なスキル——来館者の基本的な迎え方や、予期せぬ事態に柔軟に対応する方法——を熟知することが危機管理につながると説明しています。今回、すべてのスタッフに、さまざまな現場での知見経験を積み上げた弊社独自のホスピタリティ研修プログラムを受けていただいたからこそ、万全の対応ができたのです。

私自身も新たなスタッフが入ってきた場合、研修プログラムの内容をきちんと把握しているか、業務内容を理解しているかを丁寧に確認し、必要に応じてサポートしていました。そのうえで新人スタッフの業務遂行力を見極めることが肝心です。また、彼らを牽引して行くには、自身のリーダーとしての姿勢も問われますので、常に自身が模範的であることを心がけていました。」

万博から未来へ。理想的なパートナーシップを実現したKingsmenとJCS

―半世紀の時を経て再び大阪で開催された万博。シンガポールと日本が共創したパビリオンは、来館者に多くのインスピレーションと、ともに形づくる未来を想像させたと思います。大阪・関西万博の閉幕にあたり、次の半世紀、そしてその先の未来に向けたメッセージをお願いします。

アニー
「Kingsmenとの協働を通じて、JCSは、来館者一人ひとりの想いをそれぞれの記憶に残る体験へと変えました。シンガポールパビリオンが夢を現実にして見せてくれたように、誰もが好奇心と創造性をもち続け、より良い世界を描くようなプロジェクトを、これからも提供していくことがJCSの責務です。次世代にさらなる革新的な体験を届けるために、今後も協働できることを楽しみにしています。」

ポール
「今回のシンガポールパビリオンは、長年にわたってシンガポールと日本を結びつけてきた共感と共生の精神を表しています。世界的イベントである万博への参加は、Kingsmenとしても最優先で対応した「国家を代表する」事業でした。」

今回、JCSとKingsmenは、その緊密なパートナーシップにより、シンガポールパビリオンを成功に導き、今後大いに期待が膨らむ結果を得ました。KingsmenはJCSを、私たちの求めるホスピタリティを含めた厳しい品質基準を達成できる企業だと評価します。この成功体験はきっと、私たちが日本でのプロジェクトを拡大していく起点となることでしょう。可能性と希望に満ちた未来をつくるパートナーとして、これからもよろしくお願いします。

プロフィール

  • ポール・ヘイニー(Paul Haney) 氏
    Kingsmen Exhibits Pte Ltd
    テーマアトラクション&博物館部門ディレクター/Deputy Pavillion Director
    パビリオン現場責任者

  • アニー・リュウ(Anny Liu)
    日本コンベンションサービス株式会社
    プロジェクトマネジャー

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