コラム

2022.04.26

映像翻訳とは?映像翻訳家の仕事内容や求められるスキル、依頼時のコツを紹介


現代は動画の時代といわれるほど、あふれんばかりの動画が次々と作り出されています。
それに伴い、映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品に限らず、ビジネスの場で使用する企業や商品のプロモーション動画、イベント・セミナー動画などでも翻訳が必要とされる機会が増えています。

この記事では、映像翻訳の仕事内容や、依頼から制作の流れ、必要なスキルなどを説明します。これから映像翻訳家を目指す方だけでなく、映像翻訳の依頼を検討している方にとっても役立つ情報を紹介します。

映像翻訳とは?ほかの翻訳との違い

映像翻訳とは、映像を多言語化する翻訳のことを指します。映像翻訳における「映像」が意味する範囲は広く、発話や音声、ジェスチャー、動作などの言語情報だけではなく、スクリーンに映し出された物の形や姿といった、非言語情報も含まれます。

翻訳ビジネスは大きく3つに分けられ、映像翻訳の他に、産業翻訳(実務翻訳)出版翻訳(文芸翻訳)があります。
映像翻訳がこれらの翻訳と異なる点は、翻訳の対象が映像に含まれる言語情報・非言語情報すべての要素になる点です。

映像翻訳 映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品の音声、動作、物の形などを翻訳し、吹き替えのセリフや字幕を作成します。台本と映像を参照しながら、翻訳を行います。
吹き替えのセリフを作成する場合は、口の動きに合わせ、音声として分かりやすい言葉に訳し、字幕を作成する場合は瞬時に理解できるような言葉を使います。
産業翻訳(実務翻訳) 企業や官公庁等で発生する技術文書、契約書、特許関連文書等の翻訳を指します。翻訳市場の9割は産業翻訳が占めています。
業界特有の専門用語を翻訳する力が必要です。
出版翻訳(文芸翻訳) 小説やノンフィクション作品、雑誌、児童書など、出版物の翻訳を指します。海外で出版された雑誌・書籍が対象になる場合が多く、文芸作品は作者の意図を読み取り表現する力が求められます。

映像翻訳の需要増加の背景と、今後は?

デジタルコンテンツのグローバル化が進み、動画の多言語対応の需要は急速に高まっています。映像翻訳に求められる言語は、英語だけでなく、中国語や韓国語、ヨーロッパ言語などにも広がっています。
このような状況下、動画の一要素として、正確で分かりやすい翻訳が必要とされるニーズはますます高まっています。

AIの技術が発達し、手軽に利用できる自動翻訳ツールが増えていますが、現在の機械翻訳の技術では、本来伝えたい意味が正確に表現できなかったり、意味が通らない訳文になったりすることがあります。
現状では、細かいニュアンスまで正確に表現できる「人力翻訳」の方が、精度の高い訳文を作成することができるため、映像翻訳の仕事の需要は、今後も増え続けると考えられます。

映像翻訳の仕事は、PCやソフトさえあれば自宅でできるため、多くの方が副業やフリーランスとして、映像翻訳家を目指しています。自身の裁量で働く場所やスケジュールが調整でき、柔軟な働き方ができるというメリットがあるので、育児をしながら翻訳業を行いたい方にとって、映像翻訳の仕事は魅力的です。
このような背景もあり、映像翻訳家という職業は、近年注目を集めています。

映像翻訳家になるために必要なスキルについては、「映像翻訳家になるには?求められるスキルや学び方」で、詳しく説明します。

映像翻訳の種類と特徴

映像翻訳には数種類あり、以下それぞれの特徴を紹介します。

  • 字幕翻訳

    吹き替え翻訳

    ボイスオーバー

字幕翻訳

英語や中国語などのオリジナル言語・映像情報を翻訳してターゲット言語(翻訳先の言語)に書き起こし、音声と同期させて画面上に表示する手法です。字幕翻訳では、オリジナルの映像や音声、音響などが保持されます。

視聴者は、映像と同時に字幕を目で追う必要があります。したがって、短時間で効率的に読める字幕でなければなりません。そのため字幕翻訳には「1秒間に4文字」「1行の文字数は最大13文字」「最大行数は2行」などのルールがあります。字幕翻訳のコツやルールは、こちらの記事で詳しく説明しています。ご参照ください。

吹き替え翻訳

吹き替え翻訳は、オリジナル言語をターゲット言語に翻訳し、ターゲット言語の音声に置き換える翻訳手法です。オリジナル言語の音声は破棄され、映像に合わせてターゲット言語の音声を被せます。

オリジナル言語から翻訳する際、文字数を制限する必要がないなど、字幕翻訳に比べ制約が少ない、といった特徴があります。また複数の登場人物のセリフが重なった場合に、それぞれのセリフを重ねて吹き替えることができます。しかし、吹き替えという手法にもいくつかの制限はあります。その一つに「リップシンク」と呼ばれる手法があります。「リップシンク」ではオリジナルのセリフや唇の動きと、ターゲット言語のセリフを、時間的にシンクロさせる必要があります。

他にも、登場人物の「鼻を鳴らす音」や「ため息」「舌のクリック音」など、発話以外の音も完全に表現しなければなりません

ボイスオーバー

ボイスオーバーは、ドキュメンタリー番組などでよく使用されている、原音をかすかに残して翻訳された音声を被せていく手法です。吹き替え翻訳と同様、文字数の制限がないので、多くの情報を伝えることができます。
ボイスオーバーが吹き替え翻訳と異なる点は、ターゲット言語のセリフを映像にあわせる必要がないことです。また、原音がスタートしてからやや遅れて、翻訳された音声をスタートさせるという特徴があります。

映像翻訳の仕事の流れと、押さえておきたいポイント

画面上に文字を表示する字幕翻訳と、音声を使う吹き替え翻訳・ボイスオーバーでは、翻訳のプロセスは異なります。吹き替え翻訳・ボイスオーバーの場合は、ナレーターの収録時間が必要なため、字幕翻訳よりも納期までの時間がかかることが多くあります。それぞれの翻訳の一般的な流れは、以下の通りです。

字幕翻訳の場合

文字おこし ※スクリプトがない場合 → スポッティング(セリフの長さを測り、字幕の開始時間・終了時間を設定する) → 字幕翻訳 → 校正・校閲 → 字幕焼き付け

吹き替え翻訳、ボイスオーバーの場合

文字おこし ※スクリプトがない場合 → 翻訳 ※吹替用フォーマットを使用 → ナレーター手配 → MAスタジオ(ダビングスタジオ)収録 → 映像編集

映像の内容が専門的な場合は、専門分野の実務翻訳者が忠実訳(できるだけ原文に忠実な訳)を作成し、映像翻訳者が字幕・台本用に編集することがあります。

映像翻訳の依頼時に役立つ、品質を高めるコツ

映像翻訳を依頼する際に、押さえておきたいポイントを紹介します。

ネイティブチェックを利用する

ネイティブチェックとは、翻訳後に、より自然な文章に仕上げるために行う作業です。ターゲット言語を母語としている方が訳文をチェックすることで、映像翻訳の「言語の品質」を高めることができます。翻訳会社によっては、オプションのメニューとしてサービス提供している場合があります。

期待内容を明確に伝える

口調や声質など明確な要望がある場合は、依頼時に伝えておくと、仕上がりイメージのズレが防げます。イメージに近いサンプルがある場合は、事前に共有します。依頼先がフリーランスではなく翻訳会社の場合、一般的に専門のコーディネーターが対応します。コーディネーターが入ることで、スケジュール管理がスムーズになるだけでなく、翻訳品質の向上も期待できます。

取扱分野がマッチする、実績がある翻訳者を選ぶ

専門性が高いコンテンツを翻訳する場合、該当分野の知識を持つ翻訳者を選定する必要があります。たとえば、エンターテイメント分野を得意とするプロの翻訳者が、医療などの専門分野の翻訳を行うと、翻訳品質が下がる可能性があるためです。翻訳を依頼したい映像の内容と、同様の翻訳実績があるか確認した上で依頼先を決めると、高品質な翻訳に仕上がります。

また、翻訳から映像編集まで対応できる翻訳会社に依頼すると、作業や確認の手間が省けるので、社内の人件費のコスト削減にもつながります。

映像翻訳家になるには?求められるスキルや学び方

映像翻訳家に求められるスキルは、以下の通りです。

  • 語学力
  • 特定の分野の専門知識
  • 調査力
  • ライティング能力
  • 解釈力
  • 要約力
  • 表現力

翻訳家には、語学力、特定の分野の専門知識、調査力、ライティング能力が求められます。
映像翻訳家にはこれらに加え、解釈力も必要です。国や地域の文化背景を理解した上で、文脈から発言の意図を読み解く必要があるからです。

字幕翻訳には「映像翻訳の種類と特徴」で紹介した通り、文字数制限などのルールがあるため、端的に表現する要約力が必要です。吹き替え翻訳は、口の動きやため息などを考慮する必要があるため、尺に合わせる表現力が重要です。
いずれも、どれだけ多くの言葉や表現を知っているかが鍵となるため、豊富な語彙力が求められます。

プロの映像翻訳家になるために、必要な資格はありません
そのため独学で学ぶ場合もありますが、翻訳学校や通信講座を利用して、映像翻訳技術を学ぶと効率よく翻訳技術を身につけることができます。

フリーランスとして働く場合、映像翻訳会社に登録し、仕事を受けることが一般的です。登録する際には「トライアル」と呼ばれる試験を受けます。まずは社員や契約社員として翻訳会社に所属して経験を積み、スキルアップした後にフリーランスへ転身する場合もあります。

映像翻訳の依頼は、JCSにお任せください

日本コンベンションサービス株式会社(JCS)は、主幹事業であるコンベンション・大型国際会議での翻訳経験を活かし、幅広い分野で、高品質な翻訳サービスを提供しています。

翻訳のクライアント実績

  • 依頼の取扱件数

    3,500件 / 年

  • 顧客数

    1,000社 以上

  • リピート依頼率

    85% 以上

映像翻訳では、ドラマ・アニメ・CMなどのエンターテイメント分野だけでなく、セミナー・研修・PR動画など、ビジネス分野での実績も豊富で、製品紹介や講演会、各種イベントなどの映像翻訳を数多く手掛けています。

映像翻訳の対応事例

  • 講演動画
    (金融系協会)

    英語で行われた30分程度の金融に関する講演動画に、日本語の字幕翻訳を付けました。音声の文字起こしから、動画への焼き付け作業までを行いました。

  • 企業メッセージ動画
    (化粧品会社)

    創業者様の想いや環境保全への取り組み等、企業紹介動画の英語化を行いました。字幕の表示タイミングを示すタイムコードと、英語字幕のテキストを提供しました。

JCSでは、専門のコーディネーターが詳細な依頼内容や不明点などをヒアリングした上で、見積もりを提出します。映像素材の使⽤⽤途・視聴⽬的に合った最適な方法も提案可能です。
また、納品形式はあらゆるファイル形式に対応しているため、ご希望の形態に変換したご納品が可能です。
映像翻訳に関するご相談は、お気軽にJCSまでお問い合わせください。

関連記事

このカテゴリの記事

MORE