コラム

2020.06.11

ゲーミフィケーションとは?必須要素と事例&バートルテストの解説!


日本でも話題になりつつある「ゲーミフィケーション」。ゲームの要素をマーケティングや組織づくりに取り入れて、顧客やスタッフのモチベーション向上やネットワーキング促進に役立つ手法として注目されています。しかしゲームの要素といっても、どんな場面で活用できるのか、どんな手順で実施すればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、おさえておきたいゲーミフィケーションの基礎を、事例を交えて解説します。

ゲーミフィケーションの意味と概要

まずは、ゲーミフィケーションという言葉の定義と、ゲーミフィケーションを行う際に必須の要素を見てみましょう。

ゲーミフィケーションとは

ゲーミフィケーションとは、英語の「gamification」から来たもので、日本語では「ゲーム化」と訳されることもあります。ゲームを本来の目的としないサービス等にゲーム要素を応用することで、利用者の意欲の向上やロイヤリティーの強化を図ることを言います。

ゲーム要素とは、アイテムの獲得やレベルアップ、利用者同士の競争のように、利用者を楽しませて熱中させる要素のことを指します。

ゲーミフィケーションで検討すべき要素

ゲーミフィケーションをビジネス等に応用するというと、ポイントやレベルの要素を入れればいいと思われるかもしれません。ゲーミフィケーションとはそうした表面的なものだけでなく、利用者との関係性を強化して、ゲームのように夢中にさせていく一連の行動デザインです。ゲーミフィケーション施策を試す際には、ここで挙げる必須の要素をおさえておきましょう。

目的

まずは、利用者に起こしてほしい行動を明確にしておきます。例えば展示会のようなイベントの場合なら、できるだけ多くの展示ブースを回ってもらうことや、SNSにイベントの様子を投稿してもらうこと、参加者同士に交流してもらうことなどが考えられます。

クエスト

目的が明確になったら、利用者に目的の行動を取ってもらうための方法を考えます。ゲームで言う「クエスト」のイメージです。例えば、SNSへの投稿を促すという目的であれば、ハッシュタグをつけて特定のSNSへ投稿することをクエストに設定できます。クエストは簡単なものから時間のかかるものまで段階的に設定し、難度に応じた報酬を用意すると効果的です。

報酬

クエストには報酬が欠かせません。報酬の内容と報酬をもらうための客観的な基準を設定し、クエストと一緒に発表することで初めて、クエストに取り組む意欲が喚起されます。SNS投稿がクエストなら、一定の投稿数を達成した人に景品を渡す、投稿数ランキング上位に入った参加者たちを特別なイベントに招待する、などの報酬が考えられます。

可視化

クエストの達成状況を可視化することも、クエストに取り組むモチベーションになります。SNS投稿の例なら、投稿数の多い利用者をリアルタイムでランキングすることで可視化が可能です。ランキング形式にすることで競争意識が刺激され、報酬をもらうためにもっと投稿しようという意欲が湧きます。達成状況が常に更新されることも、モチベーションを喚起する上で重要です。

ゲーミフィケーションにおける報酬の設計

必須要素として挙げた報酬は、必ずしも金銭的価値に換算できるものだけではありません。ゲーミフィケーションの日本での第一人者と言われる深田浩嗣によると、報酬(リワード)には3種類あります。

マネタリーリワード

ポイントやクーポンなども含めた、金銭的価値で評価されるリワード。ゲーミフィケーションの報酬として一般的に使われがちですが、外発的動機に基づいているため、長期的に利用者と関係性を持続させるというよりは、短期的に行動を促したいときに有効です。

インナーリワード

達成感やスキルアップ感など、自分自身の中で強く意味を持つリワード。イベント招待など、自分だけが特別待遇を受けるようなものも含まれます。利用者の目的を明確に理解していないと機能しない場合もあります。

ソーシャルリワード

利用者同士など、他者から承認されることで満足感を得られるリワード。他者からの賞賛や社会的ステータスの付与だけでなく、利用者同士の交流も含まれます。

インナーリワードに見られる自己実現欲求や、ソーシャルリワードの承認欲求などは、「マズローの欲求5段階説」でも上位に位置づけられています。ゲーミフィケーション施策の目的やタイミングに応じ、これら3つの報酬を使い分けたり組み合わせたりして効果的に設計できるといいでしょう。

ゲーミフィケーションの要「バートルテスト」

ゲーミフィケーションには、ゲームのように人を熱中させ、参加意欲を向上させる効果がありますが、人々がゲームに熱中する理由は一つではありません。効果的なゲーミフィケーション実施のために、その要と言える「バートルテスト」を理解しておきましょう。

ゲーミフィケーションとバートルテストの関係

イギリスのゲーム研究者であるリチャード・バートルは、人がゲームに夢中になる心理を大きく4タイプに分けました。この分類法を「バートルテスト」と呼びます。ゲーミフィケーションにおいては利用者のタイプを想定して、それぞれの関心に合ったクエストを設定することで参加意欲を効果的に向上させることができます。

バートルテストによるユーザーの4分類

バートルテストでは、「単独行動と集団行動のどちらを好むか」、そして「関心の対象がゲーム自体か他プレーヤーか」という2つの基準を使って、ゲームのユーザーを4種類に分けます。4種類の特徴は次の通りです。

アチーバー(単独行動×ゲーム自体への関心)

アチーバータイプの人は、目標を達成することで喜びを感じます。ゲームで言えば、レベル上げやアイテムの制覇などで満足感を得るタイプで、難しいクエストや強い敵に挑戦することも好みます。遂行できたクエストに応じて称号を与えるなど、達成感を感じさせるゲーミフィケーションが有効です。

エクスプローラー(集団行動×ゲーム自体への関心)

エクスプローラータイプは、レベル上げや勝利にはあまり関心がなく、隠れた仕掛けを発見したり予想外の報酬を得たりすることをモチベーションの源とします。ゲーミフィケーションにおいては、隠れ特典などを設定することで、もっと色々なことを試そうというモチベーションを与えることができます。

ソーシャライザー(集団行動×他プレーヤーへの関心)

ソーシャライザーは、他のプレーヤーとの交流を楽しむタイプです。プレーヤー同士で協力して何かに取り組むことや、他のプレーヤーから頼られることに喜びを見出します。このタイプには、参加者同士の交流を促すようなゲーミフィケーションが有効です。。

キラー(単独行動×他プレーヤーへの関心)

キラータイプは数の上では少数ですが、競争を好み、手段を選ばず一番になりたがります。自分が他のプレーヤーよりも優れていると感じることで満足感を得ますので、ゲーミフィケーションにおいては、ランキング発表などで競争を可視化することで参加意欲を刺激できます。

バートルテストの活用例:ネットワーキング

バートルの研究によると、ゲームをする人の実に8割が、勝利や報酬ではなく他のプレーヤーとの交流を目的にプレーしているといいます。上記のユーザー分類で言えば、「ソーシャライザー」が圧倒的に多いということ。

ソーシャライザーは人とのネットワーキングを好みます。例えばセミナーのようなイベントの場合、「イベント専用のオンライン掲示板で一番多く発言してくれた5人を基調講演者たちとの立食パーティーへ招待する」といったクエストと報酬はどうでしょう。クエストとして掲示板での参加者たちの交流を促進し、さらに報酬として参加者と登壇者のネットワーキングの機会を提供することで、ソーシャライザータイプの参加者の欲求に沿いながら、ネットワーキングを劇的に加速させることができます。

このように、参加者の傾向を踏まえてクエストや報酬を設定することが、効果的なゲーミフィケーションの秘訣です。

ゲーミフィケーションの事例

ゲーミフィケーションはさまざまな分野で導入されています。ここでは一般にマーケティングに活用されるウェブサイト施策以外の事例を紹介します。

教育のゲーミフィケーション

早くからゲーミフィケーションが行われてきたのは教育分野です。小学校から大学までアクティブ・ラーニングの重要視されていますが、アクティブ・ラーニングの求める「主体的・対話的な学び」にはゲーミフィケーションの導入が不可欠であるとの研究結果もあります(藤川,2017)。
最近の事例として、金沢工業大学などが開発したSDGs教材「THE SDGs Action cardgame “X(クロス)”」があります。これは、SDGsの17の目標に関わる課題を、参加者が持つリソースの組み合わせによって解決するゲームです。同大学のウェブサイトから無償でダウンロードでき、教育機関でも活用されています。

イベントのゲーミフィケーション

イベントでのゲーミフィケーション活用も進んでいます。例えばスタンプラリー。イベント会場のあちこちにスタンプを用意してスタンプを集めさせることで、ブース全体への回遊性が高まります。

シャチハタ株式会社が提供している「重ね捺しスタンプ」は、台紙の同じ箇所に1色ずつスタンプを捺していくことで最終的にカラフルな絵柄が完成するという仕掛けです。だんだんと絵が完成していくクエスト感もあり、完成したスタンプそのものが報酬にもなります。弊社がお手伝いした第32回宇宙技術および科学の国際シンポジウムでも実施したところ、大変好評でした。

住民参加型のまちづくりワークショップなど、初期段階で広く一般参加者を募りたいイベントやワークショップにも効果的です。愛知県豊川市諏訪地区で実施されたイベント「諏訪まちリアルすごろく」では、これまでまちづくり活動に参加してこなかった住民の参加促進に効果があったと報告されています(豊田・服部・岡本,2017)。

 

バーチャルイベントのゲーミフィケーション

バーチャルイベントの場合は、ソフトウェアやアプリを活用したゲーミフィケーションが導入しやすいでしょう。講演視聴など参加者のアクションに従ってポイントが加算されるシステムを活用すれば、ポイント数が上位の参加者の名前をランキング形式で表示したり、上位者に特典を進呈したりといった施策を簡単に実行できます。

まとめ

2010年頃に用語として使われるようになったゲーミフィケーションですが、日本でも徐々に浸透しているものの、教育分野を除けば国内ではまだまだ取り組み事例が少ないのが現状です。老若男女問わずスマートフォンが普及し、ソーシャルゲームを含めたゲーム体験が広く共有されているいま、改めて施策として取り入れてみてはいかがでしょうか。

JCSでは、これまでに各種企業イベントの場においてゲーミフィケーションを取り入れた運営を行ってきました。施策の企画から運営全般まで、数多くの経験値と実績を持つわたしたちに、ぜひ一度ご相談ください。

使用事例

豊田章起・服部敦・岡本肇「ゲーミフィケーションによるまち歩きイベントの効果に関する研究ー豊川市諏訪地区におけるすごろくイベントを例として」『日本建築学会計画系論文集』第82巻 第734号,2017年

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