コラム

2017.05.10

国際資格CMPのコラム第26弾「MANAGE MARKETING MATERIALS」


当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第26弾です。イベントやその主催団体をマーケティングするということは、イベントの準備段階から終了後までの期間にわたり、その団体やイベントに対する「好感」を軸としたコミュニティを形成するということでもあります。今回はイベント参加者に「価値ある経験」をもたらす、さまざまなマーケティングツールについて学びます。

CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。

SKILL 25: MANAGE MARKETING MATERIALS
Sub Skill 25.01 - Determine needed marketing materials for event
Sub Skill 25.02 - Develop content and design parameters
Sub Skill 25.03 - Produce marketing materials
Sub Skill 25.04 - Distribute marketing materials

CMP出題頻度:2~ 4問(合計150問)


イベントやその主催団体をマーケティングするということは、イベントの準備段階から終了後までの期間にわたり、その団体やイベントに対する「好感」を軸としたコミュニティを形成するということでもあります。今回はイベント参加者に「価値ある経験」をもたらす、さまざまなマーケティングツールについて解説します。
イベントのマーケティングツールにはどのようなものがあるでしょうか。ウェブサイト、Eメール、印刷物、ギブアウェイ・販促物、看板、教育コンテンツ、プレゼンテーションのテンプレート、出展ガイド、参加登録エリアの装飾、登録フォーム、参加者アンケート、イベントガイド、ネームバッジ、ネームバッジに付けるリボン、ランヤード(ネームバッジを首から下げるためのストラップ部分)、コングレスバッグ、ステーショナリー類など、数え上げればきりがありません。 パンフレットやポストカード、レター類など、ひとつのイベントで作成する印刷物は多岐にわたりますが、最初に印刷物作成計画を立てておきまとめて発注することでコスト削減ができますし、初期段階で印刷物予算が確定できて、さらにマーケティング・メッセージにも一貫性を出しやすくなります。
サステナビリティの観点からは、印刷物に使用する紙はリサイクル率の高いものやFSC認証を受けているものを選ぶことが望ましいですが、さらに電子媒体の活用によるペーパーレスという選択肢もありえます。サステナビリティを重要視するイベントでは紙の使用量がKPIとして引用されることが多いほか、ISO20121(サステナブル・イベントマネジメントシステム)に示されている指標を用いて取り組みを管理しています。 印刷物と電子媒体の併用ということでは、主要な情報のみを掲載したポケットプログラムのみを作成して、残りの情報はモバイルアプリに集約するという方法が最も合理的です。このモバイルアプリにコミュニケーション機能を持たせることで、イベントにおけるコミュニケーションはどんどんオープンになってきています。主催者から参加者に一方的に情報を発信するプラットフォームというよりは、参加者からも発信することで双方向のコミュニケーションができる、パブリックリレーションズ的なツールとしてマーケティングを促進するようになってきているのです。
イベントプランナーにとって、こうしたSNSはさまざまな活用方法があります。参加者の反応をモニタリングすること、プログラム変更告知、ネットワーキングの促進、発信した情報が参加者によってシェアされることによる外部への発信。面白いところでは、参加者のうち周囲への影響力が大きい「インフルエンサー」をみつけることで、キャンペーンの影響力を高めるといった手法もあります。

マーケティングツールを決める

Sub Skill 25.01 - Determine needed marketing materials for event

イベントで用意されるさまざまなプロモーショングッズには、ロゴやテーマ、メッセージなどが記載されています。グッズのデザインが共通していること、参加者に与える印象に一貫性を持たせることが大切です。また、作成にあたり膨大な選択肢の中で取捨選択を行うためには、(1)参加者が必要としているものかどうか、(2)独自性があるか、(3)イベントのブランディングを促進する、もしくはサステナビリティを意識したものかどうか、といった観点があります。グッズの種類はどんどん多様化していますが、繰り返し使用できるロゴ入りウォーターボトルなど、サステナビリティをキーワードにしたものが多いです。
ふだん使いできるグッズなら、メッセージに触れる機会が増えるため、ブランド認識効果はさらに高まります。また、アイテム自体に十分な価値・印象があるものなら、ロゴは不要であることもあります。たとえばイベントでプロのカメラマンによるポートレート撮影会を行えば、参加者はその写真を大切に保管してSNSなどで紹介するでしょうし、あえて目立つロゴは入れず控えめなクレジットのみにとどめることで、写真の汎用性は高まり、拡散度合やイベント主催者への感謝も高まります。さらに、グッズはイベント終了後に捨てられてしまうことも多いですが、データはいつまでもモバイル端末などで持ち歩いてもらえるという利点もあります。
マーケティングツールとして、デイリーペーパーを発行するイベントもあります。この良いところは、1日のプログラムを振り返ることができること、参加者の声をシェアできること、翌日のプログラムのハイライトを紹介できることなどです。古典的な手法ではありますが、デイリーペーパーによって参加者のイベント関与度合いが深まるならば、ぜひ採用すべき方法です。紙ではなくデジタル版にすることもできますし、動画を使用することでメッセージを伝える力はさらに高まります。スピーカーや主催者による短いメッセージ映像を取り入れることをお勧めします。

コンテンツ・デザイン開発

Sub Skill 25.02 - Develop content and design parameters

マーケティングツールのコンテンツとデザインは、イベントのテーマに沿ったものとする必要があります。さまざまなツールが、ひとつのセットになっているようにテイストを揃えるべきです。そのためには、ロゴやグラフィック、フォントなどがすぐに使用できるよう、アクセスを整備しておくことが重要です。
参加者層が複数カ国、もしくは複数の文化にわたる場合は、言語やフレーズについてダブルチェックします。フォーマルなメッセージを好む層もあれば、カジュアルなメッセージでないと届かない層もあるからです。必要に応じて、コンテンツの著作権に関するチェックも行います。
モバイルアプリやモバイル対応のウェブサイトを制作するにあたり、重要なのは、参加者がどのような端末を使用しているかという事前調査です。プランナーの思い込みで対応端末を決めてはいけません。きちんと調査を行い参加者層に合わせた仕様で制作することで使用率と費用対効果は大幅にアップするからです。

マーケティングツールの制作

Sub Skill 25.03 - Produce marketing materials

さまざまなマーケティングツールの制作にあたっては、ブランド規定(branding guidelines)を用意しておくことをお勧めします。ブランド規定には下記のような内容が含まれます。

  • 公式アートワークのダウンロード方法
  • ブランド管理者の連絡先
  • ロゴ使用ルール
  • 色指定
  • 指定フォント

一般的にはすべてのマーケティングツールにロゴが使用されるので、マーケティングツールを制作する可能性のある人すべてにこのブランド規定を共有します。また、プレゼンテーションのテンプレートを配布することでイベント全体に統一感を与えることもしばしば行われます。
デジタルツールにはウェブサイト、参加登録サイト、モバイルアプリ、モバイル対応ウェブサイトなど、さまざまなオプションがあります。制作会社に発注する前に、まずはプランナー自身がこういうツールについて勉強しておきましょう。相見積を取るにあたっては、RFPを準備します。RFPをきちんと作れば作っただけ、制作会社からよい提案が得られます。比較検討のためには、提案書式を決めておくことも有効です。
発注する制作会社を決めたら、制作スケジュールを確認しましょう。データの校正やテスト期間などは、制作するプラットフォームごとに必要です。校正・テストはいずれも、複数名で行うのが望ましいです。

マーケティングツールの配布

Sub Skill 25.04 - Distribute marketing materials

イベント会場におけるマーケティングツール配布の原則は「タイミングよく配布する」ということです。会場内に配布を待つ人々の長い行列を作ることのないよう、さまざまなツールを配布するスケジュールを作成しておきます。受け取る側の身になってスケジュールを立てることも重要で、たとえば長い移動を経て会場にたどりついた参加者に膨大な情報を渡しても、おそらく頭が受け付けることができません。
デジタルデータで留意すべきことは会場内のネット環境です。通常、参加者は1台から3台の端末を持参します。予算との兼ね合いもあり、ユーザー数の設定は悩ましいところです が、APEXで ”Bandwidth Estimator for Meetings andEvents”という基準を設けていますので、必要に応じて参考にしてみてください。

 
  • 押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)

    Branding guidlines ---------- ブランド規定

    Bandwidth ---------- (周波数)帯域幅

    ISO20121 ---------- ISO20121(サステナブル・イベントマネジメントシステム)

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