2024.03.12

【MICE都市研究所 レガシーレポート No.２】MICEレガシーの創出 　- G7大阪・堺貿易大臣会合における地域の大学生のボランティア参加を事例に

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G7大阪・堺貿易大臣会合における府内大学生の通訳ボランティア

MICE都市研究所では、MICEに関わる産・学・官・地域をMICEコミュニティとして、MICEに関わる人材や組織の強化を目指した研修や調査を行っています。また、人々との出会いから生まれるビジネスの新たな機会やイノベーションの創出など、MICEが開催地にもたらす好影響（レガシー）に注目し、これに関する調査も行っています。

本稿では、MICEレガシーの創出事例として、G7大阪・堺貿易大臣会合における学生通訳ボランティアを取り上げます。
MICE都市研究所は、ボランティアプログラム実施によるレガシー効果を最大化することを狙いとして、学生通訳ボランティアを対象とした事前研修の企画・運営に携わりました。

G7大阪・堺貿易大臣会合は、G7広島サミットの関係閣僚会合の一つで、世界的な注目が集まる国際会議です。大阪府や堺市等で構成する地元協議会では開催をきっかけに、堺市を始めとした南大阪の魅力を世界に発信し、2025年大阪・関西万博の成功につなげることを狙い、様々な歓迎行事を実施しました。
また地元協議会は、このG7会合の開催は次世代を担う子どもたちや若者が、世界の課題を身近に感じ、国際感覚や多様性尊重の意識を醸成する絶好の機会になるととらえ、各国総領事等による特別授業の実施や学生通訳ボランティアプログラムを採用しました。
学生通訳ボランティアプログラムには、府内大学等から30名以上の学生が参加し、参加者は会合期間中、会場付近に設置する報道関係者を対象としたPRスペース等において、大阪・堺の歴史や文化、地域特産品の紹介や大阪・関西万博のアピールなどの通訳業務に従事しました。

ボランティア参加の動機

事前研修

事前研修では、G7大阪・堺貿易大臣会合及び本ボランティアプログラムを理解すること、本ボランティアプログラムを通じた目標を設定すること、学生同士がお互いを知りともに活動するチーム意識を作ることを狙いとしました。
活動目標の共有では、「会合参加者に、大阪・堺は面白い！また来たいと思ってもらう」のほか、「英語でのコミュニケーション力を伸ばす」や「まだ知らない大阪・堺の魅力を学ぶ」を挙げている学生も見られました。
研修は、ボランティア活動の目的や方針、業務の解説の後、実際の業務を想定したワークを中心に進めました。具体的には、日本や大阪・堺の歴史や文化、2025年大阪・関西万博についての理解や情報の確認、どのように紹介したらより魅力が伝えられるかをテーマに、グループワークやロールプレイを実施しました。
学生からは、「知っているつもりだったけれど、英語で表現できなかった」「面白い！と思ってもらえるかどうか不安」「説明が長くなってしまった」という声も上がりました。また、休憩時間の間にも、参加者同士でのフィードバックが活発に行われていました。

ボランティア活動後の評価

当日は、海外の方への歴史や文化、地域特産品などのご紹介だけでなく、日本の方への接遇の機会も多くありました。
さらに、地域事業者の方々との交流もあり、自身が大阪・堺の魅力について理解を深める機会になったとの声も上がりました。実際に特産品を手に取る、事業者の方から生の声を伺う、海外に向けた取組を知ることによって、これまでとは違った視点で大阪・堺をとらえることができたという感想も寄せられました。

今回の調査から、G7大阪・堺貿易大臣会合に通訳ボランティアとして関与した学生は、地域の歴史・文化・魅力を海外向けに英語で紹介するという実体験を通じて、地域の魅力への興味・関心の深化、地域の魅力発信について国内外の視点を学ぶとともに発信意欲の高まりが示されました。
これはまさに、府内学生の通訳ボランティアプログラムの実施によって、地元協議会が創出したいと考えていたレガシーの一つでありました。2025年の大阪・関西万博でも、今回ボランティアプログラムに参加した学生が核となり、多くの若い力が発揮されることを期待しています。

今回のボランティアプログラムは、G7大阪・堺貿易大臣会合のレガシーを予め明確に設定したことによって、産学官の連携がより効果的に実施された好事例と言えます。
学生を含む地域住民をスタッフとして起用するボランティアプログラムは、MICEコミュニティの育成や機運醸成、MICEの受け入れ環境整備につながる効果的な手法で、継続的に実施されることで効果が増大します。
MICE都市研究所は今後も、MICEレガシーの創出に貢献してまいります。