イベント&講演

2025.08.26
【開催レポート】第二回 フリーランス通訳者情報交換会 ~IR通訳者として活躍するために~
2025年2月8日(土)、当社は登録フリーランス通訳者を対象とした「フリーランス通訳者情報交換会」を開催しました。JCSは、登録通訳者の方々のキャリアアップを目的にしたセミナーや、長期にわたり安心してご活躍いただける継続的支援を随時実施しており、その一環として、通訳者同士の経験や知識の共有を促進する情報交換会を昨年から開催しています。
第二回目となる今回は「IR通訳者として活躍するために」というテーマで、IR通訳経験が豊富な、会議通訳者の笹川元子氏、竹内純子氏をゲストスピーカーとしてお招きし、「これからIR通訳者としてステップアップを目指す通訳者の方々が小さな疑問や不安などを気兼ねなく共有し合える場」にしようと、座談会形式で開催しました。
ゲストスピーカー
会議通訳者 笹川元子氏
東京外国語大学卒業、サンダーバードグローバル経営大学院修士課程修了。
証券会社、消費者金融会社、銀行での社内通訳を経てフリーランスに転身。
機械、エネルギー、小売等さまざまなセクターにおけるIR通訳に従事。
会議通訳者 竹内純子氏
学習院大学卒業後、9年間の商社勤務を経て通訳者に転身。
鉄道会社、損害保険会社、総合リース・法人金融会社で社内通訳の経験を積む。
初のIR通訳は2003年の精密・電子機器製造会社。以来、IRを中心にフリーランスでの活動を続けている。
当日のプログラム
第一部(45分) | 情報交換会 ・クライアントフィードバックの共有 ・事前質問へのコメント、経験談、事前準備のコツや案件対応時のアドバイス |
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第二部(60分) | 懇親会 |
第一部:情報交換会
導入として、これまでに弊社クライアントから寄せられた「良いフィードバック」と「悪いフィードバック」をそれぞれ共有しました。その後は、参加者の方々から事前にいただいた質問を順番に取り上げ、ゲストスピーカーのお二方に実務で役立つポイントや案件対応時のアドバイス等を、ご自身の経験談を交えながらお話いただきました。
当日共有した「クライアントフィードバック」の一部を紹介します。
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事業内容や成長戦略等をよくご理解いただいたうえで通訳していただけたと感じた。的確な通訳をしていただいたおかげで時間のロスも省けた。
金融業界のみならず、弊社の事業特性や事業環境、また双方の立場を充分に理解された上でのハイレベルな訳出だった。
明るい雰囲気をお持ちで、安心感のあるパフォーマンスだった。
話者が先方の英語を聞き間違えている/うまく聞き取れていないと感じられる回答をした際はさりげなくフォローいただいた。
全体的に通訳のスピードが遅く、リズムが悪かった。
電話会議で事業会社担当者は英語で対応。その英語を投資家が理解できず、フォローに入る形で通訳に入っていただいたが、フォローする対応が高圧的だった。
IR通訳の大事なポイントの一つとして「訳出スピード・訳出スタイル」を取り上げました。IRミーティングでは限られた時間内で多くの質疑応答や議論を行うため、「正確さ」と「スピード」の両立が求められます。この点について、笹川氏は「投資家が求めている回答をスピーディーに簡潔に訳すことを心掛け、結論から訳出している」と、ご自身が意識して実践されている訳出スタイルを紹介しました。
クライアントフィードバックからは、通訳スキルはもちろんのこと、ホスピタリティがある通訳者や、フレキシブルな対応ができる通訳者の評価が高いことが伺えます。竹内氏は「通訳者は質疑応答がスムーズに進むよう、時間コントロールも念頭に効果的・効率的な訳出を心がける必要がある」、「数字を訳すときは、数字を浮き立たせるためにマイクロポーズを入れている」など、ミーティング全体のスムーズな進行や、投資家が理解しやすい訳出のテクニックを紹介しました。このように事業会社と投資家双方が気持ちよく仕事ができるようにする気配りも、IR通訳者として活躍するための大切なポイントであると言えます。
開催前に募集したゲストスピーカーへの質問は、「投資家・事業会社それぞれへの対応で気を付けていることを教えてほしい」、「特に大変だった案件などの経験談を聞きたい」等、多様な質問が寄せられました。特に多かったのは「効率的な事前準備の方法が知りたい」というものでした。これに対し笹川氏は、最新の決算短信や決算説明会資料での準備のほか、「その企業の社長の発言に注目しておくことを意識している」とコメント。実際に投資家が「社長がこの間こういうことを言っていたけれど…」と質問する場面はよくあるそうです。竹内氏は「事前準備にYouTubeを活用している」という事例を紹介。注目企業の業績や今後の見通しなどについて、アナリストや金融の知識があるYouTuberが分かりやすくまとめている動画が数々あり、その中からビューの多い新しい日付ものを参考にされているとのこと。また、IRは幅広い知識が必要で、世の中で何が注目されているのか、色々なことに広く浅くアンテナを張っておくことが重要なため、お二方とも日経新聞は必ず目を通しているそうです。この他にも、多くのIR通訳案件の実績を持ち、クライアントから高い評価を得ている笹川氏、竹内氏から、経験に基づいたアドバイスや事例を数多く紹介いただきました。
第二部:懇親会
テーブルを囲み、カジュアルな雰囲気で通訳者同士の密な交流ができる懇親会を行いました。ご参加いただいた通訳者の方からは「他の通訳者とIR通訳に関して具体的な話をする機会はなかなか無いので、準備方法や経験談などを伺えて大変参考になった」等の感想をいただきました。
情報交換会の様子


終わりに
JCSでは今後も今回のような情報交換会や、登録フリーランス通訳者の方々に役立つセミナー、研修を企画・実施してまいります。
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