コラム

2023.04.14

多文化共生とは コミュニケーションを通じて違いを認め、共に生きる愛知県の取り組み


グローバル化が進み、日本で生活する外国人は年々増加し、学校や職場などで外国人とコミュニケーションをとる機会が増えています。「Create the Future Communication 新しいコミュニケーションを創造する」を経営理念とするJCSは、国際会議等でさまざまな外国語の通訳サービスを提供していますが、今後は、言語の通訳だけではないコミュニケーションが必要になると考えています。

総務省によると、多文化共生は「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」と定義されています。本記事は、ものづくり産業が集積し、就労目的で日本に在住する外国人が年々増加している愛知県にて、その実現に向けた取り組みをしている2団体の事例を取り上げ、外国人も日本人も互いに協力し合うまちづくりの姿勢や考え方について紹介します。

愛知県における多文化共生の取り組み

外国人と日本人の相互理解に必要なこととは

公益財団法人 愛知県国際交流協会では、県内に住む多くの外国人と地域の方々をつなぐ取り組みを行っています。そこで多文化共生の実現に向けた姿勢や考え方について、同協会の杉山様にお話を伺いました。


愛知県国際交流協会
交流共生課 課長補佐
杉山 美紀 様

 

言語や文化の違う国で生活する外国人は、さまざまな課題を抱えており、彼らの課題解決には、地域の協力が不可欠です。私たちは応援の輪を拡げるため、「ワールド・コラボ・フェスタ」等のイベントや各種の講座開催などで県民向けに多文化共生に関する地域の取り組みについて知ってもらう機会をつくるとともに、相談窓口である「あいち多文化共生センター」において外国人県民への支援を行っています。さまざまな国の言語や文化の存在に気づき、学び、考える場を地道に重ねていくことこそ、相互理解につながると考えています。イベントを契機として両者が継続的につながりを持ち続けることが、最終的に地域を巻き込んだ課題解決になるはずです。一人ひとりの違いを認め互いに協力し合い、すべての人が暮らしやすい社会を実現していくために、私たちはこれからも在住する外国人に寄り添ったサポートをしていきます。

①学びや気づきの場「ワールド・コラボ・フェスタ」

ワールド・コラボ・フェスタとは、国際交流・国際協力・多文化共生などをテーマとした中部地方最大級の国際交流イベントです。2022年には19回目を迎え、約64,000人が来場しました。本イベントでは、様々な国の言語や文化に触れ、楽しみながら学ぶことで、「学び、考え、行動する場」を創出しています。

会場:オアシス21(愛知県名古屋市栄区)
会場:オアシス21(愛知県名古屋市栄区)
異国の文化に触れることができる
ステージイベント
ウクライナの伝統装飾品作り
体験コーナー

②問題を抱える外国人に対して継続的な支援をする「あいち多文化共生センター」

外国人からの相談は労働から医療福祉、家庭問題、心理的な問題等多岐に渡るため、単発的に言葉を通訳するだけでは本質的な問題解決に至りません。本センターは、言葉の通訳や情報提供に留まらず、一人ひとりの背景や思いを理解することで信頼関係を築き、共に解決策を見つけていくことで、地域と外国人をつなぐ役割を担っています。必要に応じて、センター内で相談内容を共有し、スタッフ皆で考えたり、関係する専門機関にアドバイスを求めるなど、時間をかけて継続的なサポートを行っています。

  • 英語・中国語、ポルトガル語・スペイン語に対応<br />
相談員のための多文化ハンドブック 英語・中国語、ポルトガル語・スペイン語に対応
    相談員のための多文化ハンドブック

社会情勢の変化により相談内容が変化していくことから、時勢に応じた情報を掲載したガイドブックを毎年更新しています。愛知県内の市町村窓口、地域の国際交流協会が、このガイドブックを参考にして、外国人への説明を行っています。

野菜作りとともに関係をはぐくむ

愛知県刈谷市一ツ木町の住民が市のサポートを受けながら主体的に運営する多文化共生コミュニティガーデン「ワールド・スマイル・ガーデン」(以下ワールデン)は、2013年に発足しました。ワールデンが地域の人々を巻き込みながら、どのような未来を目指しているのか、会長の及川様にお話を伺いました。


ワールド・スマイル・ガーデン
会長 及川 啓太 様

 

ワールデンは 「野菜作りを通じて、外国人も日本人もすべての住民が暮らしやすい地域をつくっていくこと」 を目的に活動を始めました。開始当初は、イベント開催等の広報・集客に苦労しました。しかし、ワールデンの目指す地域づくりに賛同する外国人が少しずつ増え、彼らが知人を誘い、さらにその知人が周囲に呼びかけたことで、最近では毎月開催する合同作業日に30名以上が参加しています。

苗を植えながらのコミュニケーション
苗を植えながらのコミュニケーション
大切に育てたみかん収穫後の笑顔

ワールデンの運営で大事にしていることは、コミュニケーションです。参加者同士は、野菜作りをしながら最近あった出来事を共有したり、農作業の終了後には、自国の食べ物や自家製ジャムを持ち寄ってパーティーをしたりと、コミュニティの輪が広がっています。この10年でワールデンは「地域に住む外国人と日本人が 挨拶できる関係性をつくる」という目標に大きく近づきました。次の10年では「今までつくりあげた関係性をさらに広げ、身近にいる外国人と 自然に交流できる社会」を目指していきます。最近では、地域の中学校からのボランティアの募集を開始しました。未来の地域や日本を担う子どもたちを巻き込み、ワールデンの活動をさらに拡大していきたいです。このような自立した運営を続けていくためにも、行政やNPO、企業とも相談しやすい関係性を継続していこうと考えています。

「ワールド・スマイル・ガーデン」の参加者の皆様
「ワールド・スマイル・ガーデン」の参加者の皆様
合同作業後の自家製ジャムパーティー

多文化共生の社会に必要なコミュニケーションとは


日本コンベンションサービス株式会社
ニューノーマル推進事業部 ヘルスケアビジネス部
髙田 澪

 

言語や文化の異なる人同士が認め合い、共に生きていくためには、まずお互いを知る「出会い」づくりと、関係性として継続させる「交流の場」が必要です。コミュニケーションの本質は、日本人や外国人という線引きをせず、一人ひとりの違いを 認め合うことと考えます。

他の地域においても、イベント開催のみで終わらせるのではなく、外国人・日本人問わずに暮らしやすい地域をつくるための仕組みづくりや、行政、NPO、企業、そして地域の人々との連携がより必要不可欠となります。“Create The Future Communication“。 JCSは、いつの時代も社会のニーズに応え、新しいコミュニケーションを創造する企業であり続けるために、このような活動を社会に広めることから始め、外国人のさらなる活躍の場の創出、相談窓口の運営支援など、多文化共生社会の実現に向けて一歩一歩進んでまいります。

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