コラム

2017.08.10

国際資格CMPのコラム第29弾「Contribute to Public Relations Activities」


当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第29弾です。今月はメディアリレーションについて学びます。CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。

SKILL 28: Contribute to Public Relations Activities
Sub Skill 28.01 - Contribute to public relations strategy
Sub Skill 28.02 - Contribute to publicity plan
Sub Skill 28.03 - Manage media relations
Sub Skill 28.04 - Contribute to implementation of sustainability plan
Sub Skill 28.05 – Manage response to crises and controversies

CMP出題頻度:1~ 3問(合計150問)


「パブリック・リレーションズ」という概念に対する解釈 に は ば ら つ き が ありま す。 The Public RelationsSociety of America (PRSA)という団体が「パブリック・リレーションズ」の定義を更新するためにネット上で業界内投票を行ったところ、最も支持を集めたのは“Publicrelations is a strategic communication process thatbuilds mutually beneficial relationships betweenorganisations and their publics”(PRSA, 2012)というものでした。日本語に訳すると「組織が外部との相互利益関係を構築するための戦略的コミュニケーションプロセス」ということになります。略語であるPRについて、日本では「自己PR」などという使われ方をすることがありますが、これは本来のパブリック・リレーションズの意味とは異なります。 しかし実務の場面において、「パブリック・リレーションズ」「マーケティング」「カスタマーサービス」の境界線は次第にあいまいになっており、この3つの部署を統合する組織も出てきはじめています。

パブリック・リレーションズ戦略

Sub Skill 28.01 - Contribute to public relations strategy

パブリック・リレーションズ戦略は、マーケティングや広報プランと連携して構築していく必要があります。社会の組織に対する好印象は、顧客の獲得のみならず、よい従業員の獲得につながります。よい従業員はよい製品を生み、よい製品は販売しやすい、という好循環が生まれます。
また、組織と社会の接点では常に何らかの組織に対する印象が生じるわけですが、このすべてをポジティブな印象とする努力が必要です。なぜならば、この段階では誰が顧客や従業員になるかはわからないからです。たとえば企業ではパブリック・リレーションズとは別組織になっているカスタマーサービスも、実際にはパブリック・リレーションズに大きな影響を与えます。PRSAではカスタマーサービスの重要性について、「すべての人々が情報発信しうる世界において、カスタマーの声を傾聴し、かかわりを持ち、予測し、応えることに失敗した場合の代償は大きい。一方、コミュニケーションを通じて組織が得られるものは実に豊かである(PRSA, 2011)」と説明しており、よりパーソナルなカスタマーサービスを推奨しています。
さて、パブリック・リレーションを進めるにあたり、まずはその対象マーケットでは、どのようなコンタクト手段が好まれているかを調査する必要があります。Eメール、電話、SNSなどです。より迅速な対応が求められていることもあり、組織としては、SNSへの投稿やフィードバックをモニターする担当者を置くべきでしょう。幅広いステークホルダーへのアクセスにより、彼らの現在・将来の関心事を探り出します。組織としての対応であっても、人間との関わりであると感じられるようであれば、その戦略は成功していると言えます。また、スタッフ全員にパブリック・リレーションズに関わるトレーニングの機会を設けて、さらにガイドラインを作成することにより、失敗のリスクを回避することができます。
ソーシャルメディアの成果(ROI)はすぐに表れるものではないため、長期的な観点から取り組む必要があります。また、SNSは「情報発信」のためだけに使うものではなく、むしろ「情報収集」のために使うものだと考えるとよいでしょう。なぜならば、イベントを作り上げる段階では、ステークホルダーの関心事を把握することが非常に重要だからです。

パブリシティ計画

Sub Skill 28.02 - Contribute to publicity plan

パブリシティの分野でも急速に変化が起きており、一方的な情報発信ではなく、組織と社会の相互コミュニケーションが重要になってきています。伝統的な手法としては、関連イベントでプレゼンテーションを行ったり、プレスリリースを出したり、業界誌に記事を掲載するということが行われています。より関心を集めるためには、プレスリリースには単なるイベント情報だけではなく、ニュース価値のある内容を盛り込む必要があります。
新しいパブリシティ手法としては、ゲスト投稿(guestblogging)という方法があります。これは、関連する団体やパートナーと、お互いに情報発信の場を提供しあうことにより、発信対象を広げていくやり方です。ちなみにカクテルパーティーなどでのネットワーキングの秘訣は、初対面の人どうしを紹介するなど「他者の役に立つ」ことですが、パブリシティにおいてもこの秘訣は同じかもしれません。
パブリシティにおいて、まず「心をつかむコンテンツ」を用意することは原則中の原則です。しかし、いいコンテンツはいくらでもあり、人々が情報過多に陥っている中で、どうやってコンテンツをうまくステークホルダーに届けるかというテクニックは、むしろコンテンツそのものよりも重要になってきています。

メディア・リレーションズ

Sub Skill 28.03 - Manage media relations

メディア各社との関係構築も非常に重要です。ただ単にプレスリリースを出すだけでメディアに取り上げてもらえるわけではないので、信頼できる情報源として取材されるような関係構築を普段から進めておきます。
特に重要なアナウンスを行う場合は、プレスリリースに加えてプレスコンファレンスを行います。この場合のスポークスパーソンは、豊富な知識を持ち、聴衆に有益な情報を与えることができて、話し方が簡潔であり、質疑応答に熟練している必要があります。
また、記事掲載を期待して媒体広告を出すこともあります。これは業界誌やウェブ媒体ではなんらかの効果があるかもしれませんが、新聞などでは本体の記事コンテンツと広告では明確な区分を設けているため、あまり効果はありません。
イベント当日は会場内にプレスルームを設けます。これは記者に記事執筆のための作業スペースを提供することが主目的です。記者は大きく分けて2通りあり、イベントが取り上げている内容・領域に精通した専門記者と、イベント開催そのものを取材する地域の記者がいます。また、ブロガーや、場合によってはブログを持たないインフルエンサーもメディアとしてとらえることにより情報の配信先を広げる手法も広がりつつあり、パブリック・リレーションズの新しい戦略になっています。
どのような手法を取るにせよ、メディアとの関係はギブアンドテイクであるべきです。それぞれのメディアをよく理解して彼らの求めるインセンティブを与えること、協力を要求する前にまずは協力すること、これがメディアとの良好な関係を維持する秘訣と言えるでしょう。

サステナビリティ

Sub Skill 28.04 - Contribute to implementation of sustainability plan

サステナビリティやCSRといった取り組みは、環境への「負のインパクト」を軽減すると同時に開催地への「ポジティブなインパクト」を高めるというものですが、こうした観点をプレスリリースに取り入れることでニュース価値を高めることができます。ただし、サステナビリティの話題は飽和気味になっているため、プラスアルファの工夫が必要です。イベントが開催地にもたらす経済効果と、経済以外の効果を示すのがよいでしょう。
サステナビリティへの取り組みは、意義があり(meaningful)、検証可能で(verifiable)、主催団体のブランドに即している(align with your brand)必要があります。内容や実績がないにも関わらず、形だけ環境配慮・サステナビリティを唱えることはgreenwashingと呼ばれており、逆に主催団体のイメージダウンにつながりますので、注意が必要です。

クライシス・コミュニケーション

Sub Skill 28.05 - Manage response to crises and controversies

イベントはさまざまな危機や論争に見舞われやすい性質を持っています。これに対応するためのクライシス・コミュニケーションのあり方について、3つのフェーズに分けて見ていきましょう。

Pre-Crisis:危機や災害は、未然に防ぐのが一番です。想定しうる複数の危機シナリオと、それぞれの対応策を用意しておきましょう。有事の際に備えた複数の通信手段と、関係者の連絡先リストを完備させておきます。また、必要が生じる前に弁護士と関係構築することで、危機発生時の初動がスムーズになります。また、スポークスパーソンはメディアトレーニング、SNS担当者はクライシス・コミュニケーションのトレーニングをあらかじめ受けておくようにします。

During the Crisis:この段階での最優先事項は危機対策担当者との情報共有と、イベント参加者・スタッフへの安全情報提供です。また、SNSなどによるデマ情報を打ち消すために、なるべく早い段階で公式声明を出すことで情報源を明確にします。文化によっては、お悔やみの言葉を加えることを検討します。

Post-Crisis:危機が治まったら、一連の対応内容を振り返り検証することで、将来に向けた備えとします。

 
  • 押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)

    Greenwashing ---------- 偽善的な環境配慮

    偽善的な環境配慮 ---------- プレスコンファレンス

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