コラム

2017.03.10

国際資格CMPのコラム第24弾「MANAGE ON-SITE COMMUNICATIONS」


当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第24弾です。イベントを成功させるためには、運営当日にスタッフ、サプライヤー、主催団体、参加者、その他ステークホルダーと効率的なコミュニケーションを図ることが非常に重要です。今回は、コミュニケーションについて学びます。

CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。

SKILL 23: MANAGE ON-SITE  COMMUNICATIONS
Sub skill 23.01 – Establish Communications Framework
Sub skill 23.02 – Determine and Acquire Required Communication Equipment and Resources
Sub skill 23.03 – Specify Communication Procedures and Protocols

CMP出題頻度:2~ 4問(合計150問)


イベントを成功させるためには、運営当日にスタッフ、サプライヤー、主催団体、参加者、その他ステークホルダーと効率的なコミュニケーションを図ることが非常に重要です。たとえばセッション直前に会場のレイアウト変更が必要になったとき、講演者の到着が遅れたときは誰にどう連絡を取るのが適切でしょうか。あらかじめ緊急時のコミュニケーション・プランを立てておくことで、いざというときに迷いなく迅速に手を打つことができます。コミュニケーション・プランを立てるにあたっては、まずは使用するコミュニケーション・ツールと、ツールごとのプロトコル(取り決め)の検討から始めます。

コミュニケーションの枠組みを決める

Sub skill 23.01 – Establish Communications Framework

 会期当日のコミュニケーションの流れを検討するにあたっては、まず、どんなコミュニケーションが発生しうるのかを考える必要があります。たとえば施設に関する要望があるときの連絡相手はCSM(Convention Service Manager: 催事担当者になりますし、映像音響面での問題を解決する際の連絡相手は技術チームになります。個人に連絡することもあればグループ全体へのコミュニケーションが必要なこともあります。たとえば、プログラムに変更が生じた場合は参加者全員への案内が必要になります。チーム内部への連絡と同時に参加者も含めた関係者全員への連絡が必要な場合、どのようなコミュニケーション・ツールが必要になるでしょうか。
コミュニケーション・マトリックスというツールでは、どのようなメッセージを/誰から/誰に/どのように/いつ伝えるか、ということをまとめており有用です。
コミュニケーション・マトリックスを作成する際には、メッセージの持つ性質を念頭に置く必要があります。個人もしくはグループに向けたものなのか、側近スタッフへの内部連絡なのか、施設における参加者全員に対する非常時の連絡なのか、公式連絡と非公式連絡など、さまざまなケースが想定されます。携帯アプリでのコミュニケーションもあれば、対面で直接伝えるべき種類のメッセージもあります。
また同時に大切なのは、メッセージの内容を誰が承認するかという点です。スタッフ同士のカジュアルなやりとりに承認は必要ありませんが、参加者全員へのコミュニケーションとなれば、発信前にその内容を関係者が確認・承認する必要があります。このため、配信対象によって、コミュニケーション内容の承認フローを決めておく必要があります。また、頻繁に発生するメッセージ(スピーカー変更など)については、あらかじめひな形を作っておくのがよいでしょう。
コミュニケーションの承認フローは、そこに関わる関係者連絡先リストとともにESG(Event Specification Guide)に記載することで誰もが参照できるようにします。なおこの際、非常時の連絡先(警察、病院、消防署)なども併せて記載しておきます。

コミュニケーション・ツールを決める

Sub skill 23.02 – Determine and Acquire Required Communication Equipment and Resources

コミュニケーション・ツールを決めるにあたっては、その使用する環境を念頭に置く必要があります。たとえばイベント施設の種類とサイズ、使用する人の属性などです。小規模なイベントであれば通常はトランシーバーは必要ありませんが、情報を即時共有するために使用するケースもあります。コストも考えあわせながら使用するツールを決めましょう。代表的なツールは下記のとおりです。

トランシーバー(Walkie-Talkie/Radio)

日本ではイヤホンを使用しますが、北米ではイヤホンなしで使用することも多いようです。通信料がかからず、非常時に通信回線がダウンした場合でも使用できます。ただし通信できる距離に制限があること、いちどに発信できるのは1人だけという制約があります。

プッシュトーク(Push-to-Talk Phone)

トランシーバーの代替として使用できる携帯電話で、遠距離・長時間の会話も可能です。ただし日本では料金体系の問題などから浸透せず、すでにサービスが終了しています。

携帯電話(Mobile Phone)

遠距離・長時間の会話が可能であること、不在時にはメッセージが残せること、テキストメッセージを送れること、スマートフォンの場合はインターネット利用も可能であることが主なメリットです。ただし場所によっては通信状況がよくない場合があります。非常時に回線がダウンすることもあります。

PAシステム(PA System)

大人数のグループに向けて案内する場合に使用します。一方向のみのコミュニケーションです。

タブレット端末(Web-based Tablets)

インターネットを使用するため、Eメールやクラウド・ストレージを使用するコミュニケーションに最適です。ただし迅速なコミュニケーションには向いていないこと、使用するエリアのインターネット回線が良好である必要があること、異なる種類の端末を使用する場合はアプリケーションの互換性が必要になるといった課題があります。

なお、こうした端末を関係者に配布する場合は、貸出表にあたるsign-in/sign-out logを作成します。各端末に番号を振り、それぞれの使用者の氏名を記載します。イベント期間中に通期貸出する場合と、日ごとに返却するケースがありますが、盗難を防ぐためには返却・保管場所は施錠できる部屋である必要があります。最近ではタブレット端末などでlocked chargingdockというロック機能付き充電機器の使用も増えてきました。盗難・紛失はそのままコスト増加につながりますので、対策は万全にしましょう。

コミュニケーション手順とプロトコル

Sub skill 23.03 – Specify Communication Procedures and Protocols

コミュニケーションのアイデアにはどのようなものがあるでしょうか。たとえばあなたが当日運営スタッフに何かを伝えたいならば、あらかじめ決められた時間に行われるスタッフミーティングで伝えるのがベストです。しかしそれが緊急連絡であれば、トランシーバーなどで伝えます。さらにスタッフだけでなくイベント参加者全員に緊急連絡を行う場合は、あらかじめその手段について、音響・映像の技術スタッフと打合せを行っておく必要があります。また、すべての講演会場のデータを一括管理するSpeaker Ready Roomがある場合は、講演会場のスクリーンにメッセージを投影したり、あるいは演者の手元にあるPCスクリーン画面にメッセージを表示させて、講演者から聴衆へのアナウンスメントを行うといったケースもあります。あるいは信頼のおける人を各会場に派遣して、アナウンスメントを行う方法もあります。
コミュニケーション・プランを立てるにあたっては、どのようなシナリオが出てくるかわからないので、まずはプランを立ててみて、過去大会の経験や業界でのベストプラクティスを参考にしながらプランを更新していきます。使用するツールを決めた後は、おそらく関係者全員がそのツールを使いこなせるわけではないので、インストラクションを用意します。当然のことではありますが、ツールは職務従事中つねに携帯するように念押しすることも重要です。
特に非常時には回線ダウンなどさまざまなことが起こりうるので、さまざまな事態や関係者の取りうる行動を想定して、あらかじめできる限りのプランを立てておくことが重要です。

新規CMP合格者3名誕生!

Congrats Three New CMPs!

CMP試験は年4回行われていますが、今年最初の試験で新たに3名のCMPが誕生しました。JTBグローバルマーケティング&トラベルの日下泰子さん、安藤圭太さん、MCI-JCSの小川原桜子さんです。3名とも一発合格とのこと、すごいです!おめでとうございます! 2012年に観光庁「MICE人材育成事業」の一環として始まったCMP育成プログラムですが、この5年間で日本人CMPは2名から17名にまで増えました。国際競争力強化の一環として、これからも日本から多くのCMPが誕生することを願っています。

 
  • 押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)

    Outside Suppliers ---------- 外部サプライヤー

    Stakeholders ---------- ステークホルダー、利害関係者

    Speaker Ready Room ---------- スピーカーが講演データを確認する部屋

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