日本外科学会会員の皆様へ
日本外科学会は日本医学会でも歴史の長い分科会であり、外科系基幹学会としてこれまでに会員数4万人を数えるほどに成長してまいりました。この伝統ある日本外科学会の第100回総会の会長を務めることは、大変光栄でありまた望外の喜びでもあります。慶應義塾大学医学部外科学教室では同窓会員を始め教室員ともども、第100回日本外科学会総会の準備に鋭意努力いたしております。明治32年に創設された日本外科学会ですが戦時中の2年間は総会が開催されなかったため、第100回が期せずして西暦2000年という世紀の変わり目に重なりました。
外科学は過去数10年で大きく発展し、この10年間で目を見張る変貌を遂げました。外科侵襲学の発展に基づく周術期管理の進歩は外科手術の適応を拡大しより安全なものとしました。また、臓器不全に対する治療としての臓器置換は、臓器移植および人工臓器の開発と二方向性に発展し、外科学の主要な領域となってまいりました。さらに、外科学における基礎研究は分子生物学などの導入により、癌・免疫・炎症などの研究領域で急速に進歩いたしました。そして、この10年間で内視鏡下手術は外科学における今世紀の重要な発展のひとつとなり、外科手術の基本的なコンセプトすら変えてしまいました。これらの大きな外科学の流れを俯瞰し、今後の方向性を見い出すことを第100回日本外科学会総会の目的にしたいと思います。
したがって、本総会のテーマは「未来のための今」- Act now for the future-といたしました。1868(慶應4)年、上野において官軍と彰義隊の戦いの砲声がこだまするなか、塾祖福澤諭吉先生は塾生を前にウェーランド経済学書の講義を平常通り続けられました。その心は「世間に頓着するな、未来を見据えよ、今のための今ではなく、未来のための今」としたものと理解しております。外科学は今後さらに大きく変わると思われます。外科学は侵襲的治療学であり、ひとつの方向性としては患者にやさしい低侵襲治療がますます導入されることが予想され、また一方では外科学が持つ本質的なダイナミズムにより臓器移植・人工臓器のさらなる発展と外科的征癌戦略の新たなる展開が予想されます。これら外科学の大きな変革を前にして、今、私たちはしっかりと地に足をつけ行動・準備したいと考えます。そして重要なことは医療経済の大きなうねりの中で、合理的かつ理想的な外科臨床を目指すことです。
第100回日本外科学会総会は年次学術集会としての側面に加え、西暦2000年開催の第100回記念総会としての側面を持ちます。各界および海外からご来賓をお迎えし、総会前日の4月11日には第100回総会記念式典の開催を予定しております。また、本総会のテーマをふまえた特別企画を連日予定しております。さらに、今世紀の外科臨床の総括と今後の指針を求め、アンサーパッドを用いた会員参加型討論によるコンセンサスミーティングと教育セッション-症例から学ぶ-を企画しております。また、シンポジウム、ワークショップ、ビデオシンポジウム、サージカルフォーラム、一般演題も今後の日本外科学会の方向性を考慮したものにしたいと思います。おかげさまで、過去最高の3,425題の演題をご応募いただきました。各セッションが活発な質疑応答の場となるよう、現在プログラム委員の先生がたに採用演題をお選びいただいております。
第100回日本外科学会総会が学術集会としての内容の充実はもちろんのこと、その開催回数および開催年にふさわしい記念すべき総会となるよう、会員皆様のご協力と多数のご参加を期待しております。本総会が会員皆様の新たなエネルギーを引き出し、21世紀の外科学の発展にすこしでも貢献できるよう準備委員とともに鋭意準備しております。日本外科学会会員の皆様に、楽しみながら有意義な会期を過ごしていただけるようなプログラムにいたしますので、積極的なご参加をお願い申し上げます。
平成11年11月10日
第100回日本外科学会総会 会長 北島政樹
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