99年の10月の連休に秋の平ヶ岳に行ってきましたが、下記の千葉氏の指摘のようなことはありませんでしたが、玉子石の周りのハイ松の下にはかなりのティッシュ(トイレットペーパーではない)が散乱していました。千葉氏の1998年9月の平ヶ岳山行記録によると池ノ岳のキャンプ場にはトイレットペーパーが散乱していたとありました。平ヶ岳のような山小屋が無く、しかも登山者が少ない山では「山のトイレ問題」は無関係かと思っていました。しかし中戸氏からも指摘がありましたが平ヶ岳でもトイレの問題は避けて通れないと思われます。特に平ヶ岳のような地形では、自然の分解能力は思ったほどには高くないようです。また散乱していたトイレットペーパーはたぶんポケットティッシュのことだと考えられますが、この分解しないポケットティッシュも問題です。→ポケットティッシュ問題
そこでこのページでは平ヶ岳におけるトイレ(登山者の排泄と環境の関係)問題を考えてみましょう。98年6月には甲府市で第一回全国山岳トイレシンポジウムが開催され、ここ半年ぐらいの新聞にはかなり山とトイレの記事が増えてきているように思います。今年の2月24日の朝日新聞朝刊には「富士山トイレ有料化を検討」のタイトルで年間15万人も登山者が入る富士山のトイレを有料にして、それなりのトイレを作って山小屋の屎尿が環境破壊にならないようにすることを山梨県が検討すると言う記事が掲載されていました。
登山とトイレの問題を考えるのにあたり、日本トイレ協会にお願いして、上記シンポジウムの記録と関連資料をいただきました。その中に今回の平ヶ岳のトイレ事情を考えるには打ってつけの本が紹介されていました。ちょっと古い本なのですが、まだ入手可能なため興味ある人は是非読んでみてください。ただし大きな書店でも棚に並んでいることはなく、注文する必要があります。
山でウンコをする方法 キャサリン・メイヤー著 1995年 日本テレビ放送網 1456円
この本は1942年ニューヨーク生まれのトレキングやカヌーによる川下りを愛するアウトドアーライターによるものです。環境問題の視点から野外での排泄の歴史、野外での排泄の具体的な方法、女性特有の深刻な問題、排泄が自然に及ぼす影響など。茶者の体験談を交えユーモラスに書かれています。
現在、山とトイレに関して問題となっているのは以下の4点ですが、平ヶ岳の現状に即して考ると、山小屋やトイレの施設がないため、「山のでマナー」が一番の問題になります。ここではこの問題の解決策として山小屋を建てたり、有料トイレを設置したりする考えは排除して現状からどうするかを考えてみましょう。
平ヶ岳に関してこの問題の結論は、登山者に求められる一番のマナーは何も残さず、大便は持ち帰ることでしょう。ただしこれは理想的なことです。現実的な解決方法としては、この持ち帰りと一般的な山のマナーと言われる「山で用をたした時には持参したシャベルで地中に埋める」の組み合わせとなるのではないでしょうか。登山者が多くなれば、キャンプ場の限定されたところにはもはや穴を掘る場所が無くなることも考えられます。またキャンプ場の周辺の高山植物がある薄い泥炭層をむやみに掘り起こすべきではないでしょう。標高が高く、気象条件も厳しい環境下にある平ヶ岳山頂、キャンプ場、玉子石のある池ノ岳では基本的には持ち帰り、鷹ノ巣登山口から下台倉山、台倉山、白沢清水先の池ノ岳直下標高1,700mまでの尾根までは地中埋没処理がいいのではないでしょうか。もちろん最初から全行程持ち帰りが望ましいのは言うまではありません。小便までは持ち帰る必要はないでしょう。ただし場所に注意を払う必要はあります。
なぜ平ヶ岳山頂付近では大便を持ち帰る必要があるのか考えてみましょう。この持ち帰るというのは相当抵抗感がありますが、以下の理由を冷静的に考えれば、頭では理解していただけると思います。後は実行するのみです。これから平ヶ岳をめざす人は是非この準備をお願いいたします。
グランド・キャニオンの河川管理事務所では必要な容量の容器と知識、そしてすべて持ち帰るという誓約なしにはどんな川旅も許可されず、携帯トイレの中身を持ち帰ることについて2ページの説明書を発行しているそうです。またカルフォルニア大学バークレー校で行われているアウトドア・プログラムにはスキヤーのため個人的持ち帰りシステムを組み入れているそうです。平ヶ岳を管理している地元の湯之谷村ではこのような登山者の分身の持ち帰りの具体的な方法の説明書を発行していることは聞いたことがありませんが、近い将来にはかならず必要になるでしょう。やわらかく温かい自分の物をリュックに入れて持ち歩くことを考えるだけで気分が悪くなる登山者もいるかもしれませんが、これからの環境に気を配れる登山者には、自分の大便を持ち帰ることが、ゴミを持ち帰るのと同じように、ごくあたり前のことだということが常識になるでしょう。
前述の本の著者キャサリン・メイヤー女史も「しかりと安全に処理すれば臭いがもれれることもないのだから、自分の大腸からビニール袋に移動した程度のことじゃないかという発想の転換をして欲しい」と言っています。
それでは、持ち帰りの具体的な方法を考えてみましょう。必要な容量の容器と知識です。ビニール袋を二重にして使用します。または牛乳の紙パックを利用する方法も考えられます。強度や、防水性もあり自分で立ってくれる利点もあります。いずれも直接できる人はかまいませんが、まずするべきことをしてからシャベルやスコップで、それや土をビニール袋や紙パックに収容します。収めた後は必ず排気を行ってからきっちりと蓋をしめ、テープでシールします。メイヤー女史は直接容器に回収するにはその姿勢を含めかなりの練習が必要と言っています。
洋式の水洗トイレが常識となった今自分の分身をまともに眺めた人がほとんどいない中で、どれくらい入る容器を準備したら良いかがすぐわからないかも知れません。この時は後で処分することを考えて拭いたトイレット・ペーパーは別に回収しましょう。「分身」を適当な排泄物処理施設(下界のトイレ)で最終処分するには中身とビニール袋・紙パックと分けること。ビニール袋は分解せず、パイプを詰まらしたり、浄化槽の撹拌装置を壊したりします。下水処理場でも問題となります。市販の携帯トイレを使用した場合は添加剤に入っている薬に注意が必要です。薬によっては分解に必要なバクテリアの活動を抑制するだけでなく、殺してしまうものもあります。自宅まで持ち帰り、自宅の排泄処理方法が浄化槽の場合は添加剤入りの持ち帰り物を処理できないことがあるので注意が必要です。その場合は携帯トイレの付属の説明書にしたがって最終処分を行うようにしてください。間違っても下山中に「分身」が入ったビニール袋や紙パックを谷底に投げ込んだり、駐車場のゴミ箱にそのまま捨てるなどはしないように。何のために苦労して自分の物を運び降ろしたのかわからなくなります。
余談になりますが、このような視点で赤ちゃんの紙オムツの処理について考えると、ここで問題にしている「中身」を含んだままの紙オムツを通常のゴミのようにゴミ回収に出すことが、いかに環境に対して問題となるか想像できると思います。
今度は地中処理の方法です。今までの常識的な方法で良いわけですが、マニュアル風に書けば次のようになります。
以下のホームページではこのメイヤー女史の本が参考資料として取り上げられ、具体的なトイレ問題のことが説明されています。参考にしてください。