平ヶ岳に関する論文
平ヶ岳を専門に扱った論文など無いと思い込み特別に論文を探しませんでしたが、専門家の方からご紹介を受け、抜き刷りまでお送りいただく機会を得ましたのでここにご紹介させていただだきます。
武田久吉 1972年
平ヶ岳督見記 −山上の水蘚湿原未来記−
植物と自然 第6巻 第9号 1972年
晩年の植物学者武田久吉博士による平ヶ岳観察記録。ヘリコプターによるアプローチは非常にめずらしく今後もまず考えられないと思われる。この論文の中で、尾瀬のアヤメ平よりは広葉樹の種類が少ない、山頂の土は泥炭までになっていない水蘚のようでありいずれは針葉樹林に変化すると予測される。
土橋進一 1972年
平ヶ岳山頂付近・裏燧御池周辺の湿原植物等の目録
植物と自然 第6巻 第9号
上記の武田博士の論文を補足する内容となっている。尾瀬の湿原よりは植物の種類が少ない。乾燥化が進んで湿原から針葉樹林へ移行中と指摘。土橋氏はこの武田博士の平ヶ岳ヘリ観察の企画を実行した本人。
>>土橋によるヘリコプターに平ヶ岳アプローチの話
安田正次・沖津進 2001年
上越山地平ヶ岳湿原の乾燥化に伴うハイマツ・チシマザサの進入
地理学評論 74A-12 709-719 2001
著者アブストラクト:
上越山地平ヶ岳頂上部の湿原において乾燥化に伴う非湿原植物の侵入を明らかにするため、湿原とその周囲の植生分布を調査した。湿原の境界域にはハイマツとチシマザサが分布し、それらは湿原に侵入していた。まずハイマツが湿原内に侵入し、それがその後にチシマザサが侵入可能な環境を形成すると推察された。チシマザサは湿原の乾燥化を助長させていると考えられた。以上から、湿原に侵入したハイマツは後にチシマザサなどの植物に生育場所を奪われる先駆的植物と推定された。同時にチシマザサの侵入により非湿原植物の侵入がさらに進むと推測された。
キーワード:平ヶ岳、山地湿原、乾燥化、ハイマツ、チシマザサ
平ヶ岳の積雪が少なくなり山頂の湿原が乾燥化しているという衝撃的な論文。
そのため池塘が減少し一部の池塘が干上がっている報告も紹介されている。通常の山地湿原の乾燥化と比べて平ヶ岳の乾燥化では、ハイマツの侵入が先行してその後チシマザサ、ウラジロナナカマド・アズマシャクナゲ、オオシラソビと進行する。
安田正次・沖津進 2001年
上越国境平ヶ岳湿原乾燥化の一因としての積雪深経年変動
千葉大学園芸学部学術報告第55号 43−47 2001年
前述の論文「上越山地平ヶ岳湿原の乾燥化に伴うハイマツ・チシマザサの進入」の前提となるべく平ヶ岳の降雪の減少の実態を冬季の季節風の流れから十日町と片品での積雪データより経年変化を調べ1970年代からの積雪量の減少を明らかにする。平ヶ岳山頂の湿原は、主に多量の降雪を涵養源とするため、積雪の減少は即湿原の乾燥化に結びつく。